仔犬からメス犬へ -初めてのヒート-

ワンコ

仔犬の成長は予想以上に早い。お迎えしてまだ三ヶ月しか経っていないが、日々、目まぐるしく成長しているワンコと接していると、既に一年以上一緒にいるような錯覚に陥る。

あっという間に歯が生え変わる

月齢五ヶ月を過ぎたあたりから、口元を歪めながら変顔をする場面が増えてきた。口の中に異物でも詰まっているのだろうか?或いは、お腹の調子がすぐれず吐き気を催しているのか。

気になって様子を見守ると、しかめっ面をしながらモグモグと顎を上下に何度か動かしたあと、小さな白い粒を吐き出した。指でつまみ上げてみると、ワンコの前歯だった。

米粒より小さく、うっかりすると見落としてしまうくらい可愛らしい前歯だ。口を開けて確かめてみると、確かに抜けている。こんな小さな歯でよくガジガジと木片を齧れるな~と感心してしまうくらい小粒の乳歯だ。

その後も、変顔をする度に乳歯を吐き出し、気がつけば、いつの間にか永久歯に生え変わっていた。

仔犬から成犬への準備が体内で確実に進んでいるようだ。そんな変化に喜んでいると、さらに大きな変化が訪れた。

大人のワンコの仲間入り

出先からLINEで帰るコールをすると、その音をワンコは理解しているようだ。着信音が鳴ると,即座に扉の前で伏せをしながら待っているらしい。そして玄関の内扉を開けると、毎回、熱烈歓迎状態で出迎えてもらえる。

これだけ全身で喜びを表してくれると、どんなに疲れていても自然と笑みがこぼれ仕事の疲れも吹っ飛んでいく。そんなささやかな喜びを日々味わいながら過ごしていると、ちょうど月齢六ヶ月を迎えた日、仕事から帰宅すると、いつものように大はしゃぎで出迎えてくれるのだが、なにか様子が違う。

盛んに床を気にしている。

我が家のワンコは、お迎え当初から出迎え時の嬉ションが恒例になっている。トイレシーツを敷いて対策しているが、その嬉ションも近頃はだいぶ落ち着いてきた。以前ほど盛大に漏らすことはなくなり、たまに小さな染みを落とす程度で済むようになった。

その日も所々にお漏らしの染みが広がっていたが、よく見ると、赤い染みが点々とシートに付いていた。

ついにヒート(雌犬の生理)が始まったようだ!

小型犬の場合、早ければ月齢5ヶ月位から始まるようで、うちのワンコも5ヶ月を過ぎた頃から局部を気にするようになり、頻繁に舐めるようになってきた。

ヒートの兆しが見え始めていたので、あとはワンコにどういう変化が起こるのか、そして避妊手術をどうするか?妻と二人であれこれ話し合いながら想像を膨らませていた。

避妊手術の是非

ペットの避妊手術や去勢手術を行う最大の目的は、望まない妊娠を防ぐことだろう。

ペットを飼う場合、避妊や去勢をするかしないかは飼い主が選択を迫られることになる。いろいろな飼育環境やペット自身の体調に関わることなので、どちらが良いか悪いかの問題ではない。

もし、避妊手術を行うのであれば、できるだけ早い時期(初ヒート前、1回目のヒート後)が望ましいというのが近年の流れのようなので、今回の初ヒートを経験してから結論を出すことにした。

外飼いが当たり前だった時代なら、庭先や玄関先にいつの間にかオス犬がやってきて、気がついたら妊娠していました、というケースはあった(以前飼っていたワンコの母犬がそうだった)。

令和の時代になると、都心部では室内飼いが主流になりつつあり、野良犬の姿もすっかり見なくなった。部屋から脱走でもしない限り、外でオス犬と逢瀬を楽しむことは考えにくい。

我が家のワンコは慎重な性格のようで、未だにベランダに出るのはためらっているし、玄関から抜け出したとしても外階段への扉は重く、ワンコの力では開けることはできない。当面、脱走の心配はなさそうだ。

そうすると、残る可能性は散歩中のアクシデントが挙げられるが、散歩中にリードが手から離れてしまい、そのまま逃走、行方不明、数日経って戻ってきたら妊娠していました。或いは、ワンコの飼い主達が公園で井戸端会議を楽しんでいる最中に、うっかり目が届かないタイミングで結ばれてしまうことも無きにしもあらずだ。

ドッグランなどがヒート中のメス犬を立入禁止にしているのは真っ当な措置だろう。

その点、うちのワンコは散歩中に他のワンコと出会うことがあっても、自分から近づくようなことはせず、伏せの状態で相手の出方を観察している。なので、ヒート時の散歩は、時間やコースをずらしたりしてオス犬と出会わないように注意し、もしオス犬が寄ってきたら抱っこするか追っ払えば済むことなので、リードをきっちり握ってコントロールさえしていれば、アクシデント合体は回避できる。

避妊手術を受けることで、子宮系の病気を未然に防げるというメリットもあるが、そもそもヒートは病気ではない。

生命の誕生を司る大切な器官を人間の都合で摘出してしまうというのは、よくよく熟慮して決める必要がある。

メス犬の場合、避妊手術をしなければ、将来、子宮系の病気にかかるリスクが高くなる傾向があるということだが、全てのメス犬が必ず子宮系の病を発症するということではなく、あくまでも可能性の問題だ。仮に摘出したとしても、他の病気を防げるわけでもない。

全身麻酔で開腹手術を行うということは、なんだかんだ言って、かなりのリスクを伴うことも忘れてはならない。先生の腕前はもちろん、術後の状況次第では後遺症が残ることもある。また、臓器を摘出することで、そのワンコ自身が持つ本来の性格や、体質が変わってしまうこともあるようだ。

とはいえ、お迎えしたペットのヒートがとてつもなく重い状態で、飼い主もペットも日常生活に大きな支障が生じるような状況では、避妊手術を検討する必要はあるだろう。

望まない妊娠の問題を人間に置き換えた場合、手術で完全に防ごうとするには男性側のパイプカットが一般的だろう。

一方、女性が自分の意志で子供を望まない場合は、避妊薬を服用することになるのだろうが、それ以上に臓器を摘出するという選択をする女性は、果たしているのだろうか?

癌を患い摘出しなければ命に関わる場合であっても、心に大きな傷を追うのではなかろうか?

大切なことは、

ペットに対して飼い主は全責任を追う立場にあるが、人間は神ではないということだ。

我が家のワンコに対しては、可能な限り自然な状態を尊重していこうと思っているが、現実はどうだろう?

ヒート中のワンコの様子

実際にヒートが始まってみると、出血に関しては立ち上がったり走ったりした時など、腹部に力を入れるような体勢になると、チョロっと出てしまうようなレベルだ。思っていたほどの量ではなく、しかもワンコ自身がすぐに舐めてしまうので、よくよく観察していないと見落としてしまう。

大型犬などは、ソファー一面が汚れてしまうくらい出血することもあるようで、それに比べると無いに等しい。

それでも二日目、三日目になると、フローリングや絨毯に小さな染みが付いていたりするので、やはり対策は施さなければならない。

ワンコ自身も汚れを気にしているのか、ソファーに付いてしまったようなときは、できるだけバレないように、速攻で舐めて痕跡を消そうとしている(それでも唾液でガビガビになっているので、すぐにバレるのだが)。

ワンコ用のマナーパットやオムツを履かせてみると、漏れたりすることも無く、室内フリーにしていても汚れを気にせず過ごせることがわかった。

ワンコ自身も床に付かないことが嬉しいようで、なんとなく表情に安心感が漂っている。マナーパットを付けていないと眠りも浅いようで、頻繁に起きて舐めていたが、パットを付けておくと煩わしさから開放されるようで、眠りも普段と同じく深く眠っている。

妻曰く、今どきのオムツはワンコが噛みちぎろうとしても破れることもなく、よく考えられたデザインだと絶賛していた。私が初めての頃は~と、半世紀も前のことをしみじみ語ってくれた。

このように便利なオムツやパットだが、オムツを履かせると歩くのを面倒臭がるようになった。下半身が動きづらいようで、ガニ股歩行でヒョコヒョコとユーモラスに歩く姿が笑いを誘う。

初めのうちは二~三歩歩いたら丸まっていたが、面白いことに、二人が見ている前ではまるで足腰の悪い病人のようにヒョコヒョコと歩いているのだが、隣の部屋でコッソリ隠れて観察していると、何事もなかったように普通に歩いていた。飼い主を笑顔にしたいというサービス精神のあるワンコだ。

食事に関しては、一般的には食欲が落ちるようだが、うちのワンコの場合は普段と変わらず、というより、水を飲む回数も含め普段よりたくさん飲食している気がする。

こころなしか、いや、確実に体型がふっくらしてきたようだ。

体調面では、ヒート中ということで体が怠いのだろうか、部屋の中をうろつくことはなく、その場で丸くなって寝込んでしまう。大好きな散歩もあまり行きたがらず、終日、引っ付き虫になって大人しく過ごしている。

それでも、気分転換を兼ねてオムツを外して散歩に連れ出すと、いつも通り元気に走り回っている。

普段の散歩と違うところは、頻繁に局部を舐めていることだ。気持ちよく走っている最中でも突然止まり局部を舐め始めるので、ダッシュは控えめにして軽く走る程度に留めることにした。

また、オシッコも回数が増え、特定の場所に来ると数メートル間隔でマーキングするようになった。オス犬へのアピールなのだろうか?

それ以外で気になるところといえば、普段に比べ、多少イライラしている時が増えたような気がする。こればっかりは男にはわからない世界だ。できるだけそっとしておこう。

特に、マナーパンツを履かせるときは歯を剥き出しにしてガウガウと威嚇してくるが、それでも手を噛むようなことはなく、散歩から帰って手足を拭くついでに履かせると大人しく履いてくれる。一度履かせてしまえば、あとは終日穏やかに過ごしている。

そんな状況でいつもより大人し目に過ごしてたが、ヒート中であっても、帰宅するといつも通り熱烈歓迎で出迎えてくれる。

その後、二週間ほどで出血は止まり、それに比例して元気を取り戻し普段のワンコに戻ってきた感じだ。

結局、ヒートが始まっても大した出血量ではなく、こまめに床掃除をしていればなんとかなりそうなレベルだ。

それでも、今のうちからオムツに慣れさせておけば、将来、介護が必要になった時に介護パンツを履かせるのも楽に対応できると思うので、その時のためのトレーニングも兼ねて、ヒート中で室内フリーのときはオムツで対応することにした。

この後は、いよいよオス犬を受け入れ可能な段階になっていくので、細心の注意を払いながら散歩に出かけることにしよう。

というわけで、初めてのヒートも思っていたほど手がかからず、この程度の手間なら自分たちで十分対応していける事がわかった。

結論

我が家のワンコに対しては、避妊手術はしないことにした(当面の間)。

人と違ってワンコのヒートは痛みを伴うことはないようだが、毎年二回の頻度で一生続くとのこと。

将来的にワンコ用の避妊薬ができれることを願っているが、それが叶わないのなら避妊手術もやむなしとなるかもしれない。

どちらにせよ、ワンコ自身が元気で、可能な限り自然体で過ごせる事を第一に考え、家族でしっかり寄り添っていこうと思う。

、、、それにしても、このワンコは手間のかからないワンコだ。無駄吠えや要求吠えもなく、トイレも完璧で嬉ションもいずれ止まるだろう。その他、いろいろな事柄に直面しても、常に自分で判断して行動してくれるので、飼い主の手を煩わせるということが殆ど無い。あえて挙げるなら、散歩のときに地蔵のように動かなくなる、いわゆる拒否芝になる頻度が多いということくらいか。

その様子はまたの機会に、、、

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