コロナの諸症状がようやく収まった。味覚や嗅覚が無くなったことはショックだったが、何も匂わないことをいいことに、オナラをブーブーかましていたら妻に激怒された。
体の怠さはいまだに続いているが、おかげさまで今は味覚、嗅覚も戻り食事を美味しくいただけるようになり、オナラは自粛している。仕事も一段落したので、気分転換とコンディションチェックも兼ね近場の山にでもでかけようと思ったが、日本各地で熊の被害が過去最高を更新している。
熊以外も猪、猿、鹿、さらにはスズメバチの被害報告も激増している。
一体どうなってしまったのだろう?
最近の熊被害が激増している原因について、四国のキャンプ上で狸とバトルした出来事から考えてみる。
鉄砲石川キャンプ場
愛媛県の景勝地、面河渓谷にある無料のキャンプ場で友人Yとキャンプをした時の出来事。
鉄砲石川キャンプ場は、駐車場から急坂を暫く登らないとキャンプエリアにたどり着けないこともあり、穴場のキャンプ場だ。このときは二泊三日のスケジュールで、初日はYと合流し、二日目はソロで石槌山に登る予定だった。
いつものごとく現地で合流し、他のキャンパーはいなかったので二人して夜中までヨタ話で盛り上がっていた。
この日は生憎の雨模様。Yの大きめタープのもとで食事をしていたが、夜半過ぎ、雨が本降りになってきたので宴会途中で切り上げ、お互いのテントにいそいそと引き上げとっとと就寝。
翌朝、いつもは先に起き出し朝食の支度をしているYだが、今朝はなかなか起き出してこない。
朝一の珈琲を一人で味わっていると、ゴソゴソと隣のテントからYが寝ぼけ眼で起き出してきた。
開口一番
夜中は騒いでしまいスイマセンでした!
は?
狸が残飯類を漁りだして、食器類を食べ散らかしたんで、
明け方まで鬼ゴッコをしてました。
言われてみると、食べきれずにテント前に残しておいた夕飯がクッカー類と共に消えていた。聞けば、明かりを消して寝ようとしたら狸がやってきて、朝食用に取っておいた夕食の残りをクッカーごと奪われてしまったとのこと。土砂降りの暗がりの中、奪われたクッカーを取り戻すべく、狸と明け方近くまで鬼ゴッコをしていたそうな。
昨夜はYのテント前でお互いのクッカー類を出し、各々が色々な料理を作っていたが、夕食後に雨脚が強くなったので、離れた場所にある炊事棟まで行くのが億劫だった。
自分は登山時の習慣から、調理した食材を一切残さず食べきり、ウェットティシュでクッカー類を拭き、テント内に仕舞っておいた。
一方、Yは、翌朝のおかゆ用にと、食べきれなかったご飯をクッカーに残してテント前に置きっぱなしにしていたようだ。雨脚がとても強かったので野生動物の心配は無用と思っていたのだろう。
爆睡していたので、そんなことなどつゆ知らず、隣のテントで繰り広げられていた出来事には全く気づかなかった。
結局、Y特製のお粥は食い損ねてしまった。
珈琲とシリアルの軽めの朝食を済ませ、Yはボコボコに凹んだクッカー類をしまい、ブツクサ言いながらバイクに跨り帰路についた。
誰もいないキャンプ場で
その後ろ姿を見送ったあとは完ソロ。面河渓の美しい渓流沿い散策したり、誰もいない静かなキャンプ場で渓流の音に耳を澄ませ、翌日の石槌山登山に備えストレッチなどをしていた。
日が暮れて夕食の支度をしていると、草むらから動物の視線を感じた。ヘッドライトで気配のする辺りを照らすと、2つの光がこちらを見つめている。声を出して威嚇すると光は消えるが、暫くすると違う方角から2つの光がジッとこちらを見つめている。
四国に熊はほぼいないので特に緊張することはなかったが、猪なら困ったな~と思いつつ、大きさから推測すると小動物のようだ。
食事を終え珈琲を飲みながら過ごしていると、ついに光目の正体が現れた。
草むらからノソノソと出てきたのは狸だった。暫く観察していると、足元近くまでやってきてウロウロしている。こいつが昨夜Yと鬼ゴッコをしていた犯人に違いない。声を出して威嚇しても逃げる素振りを見せず、どこか人間慣れしている。
可愛い表情でジット見つめられていると、何となく食べ物を与えたくなるが、そこはグッと我慢。
野生動物と人間の間には超えてはいけない境界線がある。
暫くテント周りをうろついていたが、やがて食べ物を貰えないと気づくと狸は草むらに消えていった。
夜も更け就寝の支度に入ることになった。クッカー類は全てテント内に収納し、念のためチェアもしまい込みフライシートを閉め眠りについた。
ふと外の気配で目が覚めた。雨は止んだようだ。
月の出ていない闇夜にフライシートをこする音がしている。
寝袋から上半身をそっと起こし、インナーシートのメッシュ越しに外を覗くと、フライシートと地面の間に黒い物体が動いている。ヘッドランプのスイッチを入れると、フライシートと地面の隙間から狸が顔をのぞかせ、上目遣いにこちらを見つめている。
あまりの可愛さに追い払う気になれず、しばらくのあいだ見つめ合っていた。
そのうち狸のほうがノソノソと後退りし、顔を引っ込め遠くへ去って行く気配がした。あれだけ可愛い表情で上目遣いにおねだりされたら堪らない。お菓子の一つでもあげたくなりそうになったが、やはりグッと堪えて再び寝袋に包まった。
翌朝、鳥の声で目が覚めた。
フライシートは明るい輝きを放ち、晴天を確信した。トイレに行こうとインナーシートのチャックを開けると何か違和感。
この日は石槌山への登山に備え、登山靴を前室に揃えて置いてあったのだが、片方の靴が無い。
もしかして、狸に盗まれた?
あれこれ思考を巡らせようとするが、膀胱が破裂しそうだった。とりあえず片足ケンケンでトイレまで飛び跳ね、用を済ませた。
出すものを出した後、改めて落ち着いて昨夜の状況に思考を巡らせると、狸とお見合いした後も、テントの周りを狸がウロウロする気配を感じながら眠りについたことを思い出した。
食べ物をくれないことに腹を立てた狸が、人間が寝静まった後にフライシートの隙間から忍び寄り、腹いせに登山靴を盗んだのだ。
そのまま片足ケンケンで盗まれた登山靴を探すため、キャンプ場のあちこちを見回っていると、山の斜面上方に登山靴らしき物体を発見。片方の靴下が汚れるのも構わず斜面を登ると、そこには靴紐が食いちぎられ、防水生地は穴だらけ、カカトは噛みちぎられた状態の無惨な登山靴が打ち捨てられていた、、、
↑↑↑靴が見つかった斜面からテントを見下ろす↑↑↑
今回登る予定だった石槌山は垂直の長い鎖場があるので、以前登った経験からハイカットの登山靴より、ローカットの軽量トレランシューズのほうが登りやすいと思い、一週間前にトレランシューズを購入したばかりだった。
一度も実戦投入することもなく、四国の山中でゴミになってしまった、、、
、、、クソ狸めーーー~~~!!!
上目遣いの可愛いかった記憶は吹き飛び、一気に怒りが込み上げてきた。
今度出くわしたら狸汁にして、骨の髄までしゃぶり尽くしてくれようぞ!
憤懣やるかたない思いを胸に秘め、ズタボロの靴はダクトテープで応急補修したが、見た目レゲエさんの靴になってしまった。
いつもは美味い朝の珈琲もこの朝はゆっくり味わう気分ではなく、早々にテントを撤収し石槌山の登山口まで車で移動した。
こういう日に限って最高の登山日和。
駐車場は車がどんどん入ってくる。いそいそと登山靴の紐を締め直し登山者が登山口へと消えていく。
雨は降りそうもなかったので、ダクトテープを巻いた状態で登るか逡巡していたが、結局、やめることにした。どんなに天候が良くても、初めて使う靴を応急処置した状態で登るのはリスクが有りすぎる。
暫くの間、駐車場から美しい山並みを眺めていると、怒りはようやく収まり、今回の出来事を冷静に考えてみた。
もし、狸に靴を壊されていなかったら、最高の登山日和の中で元気に登っていたのだろうが、アドレナリンが出すぎて油断し、鎖場から滑落し大怪我を負っていたかもしれない。
↓↓↓登山を始めた頃(40歳頃?)に登った時↓↓↓
垂直に延々と続く鎖場から落ちたらおそらく、、
うん、きっとそうに違いない(*^^*)
狸は山の神の化身で、調子に乗って怪我をしないようにと、今回は敢えて登るなと忠告してくれたのだ。
冬キャンプの場合、登山靴が凍らないようにテント内にしまうことはあるが、今回も、野生動物が徘徊しているのが分かっていたのに、靴をテント内に保管しなかったのは自分の落ち度だ。
狸が悪いのではなく、自然の中に身を置く以上、あらゆる事態を想像できなかった自分の未熟さを今回の教訓とし、今後の糧にしよう。
そう考えると諦めがついた。
なにごとも気持ちの持ち方一つで、マイナス思考からプラス思考に切り替えることができるのだ。
美しい山並みをノンビリとドライブしながら石鎚山系を後にし、道後温泉で早めの汗を流すことにした。
連日の熊襲撃報道に思うこと
ここ数年、異常とも言えるキャンプブームが続き、有名なキャンプ場は難民キャンプの様相を呈している。それはそれで仕方ないが、問題はキャンパーのマナーだ。
初心者はネットで色々調べて道具やファッションには気を使うが、マナーに関しては疎かになっている場合が多い。特に食料のいい加減な管理はいただけない。
インスタ映えを目指し、手の込んだ料理を作るのは構わないが、調理時の端材を流し場に捨て置いたり、食べきれずに余った食材を草陰に廃棄したり、最悪なのは小動物に与えたりしているキャンパーは後を絶たない。
管理人が常駐しているようなキャンプ場は、ゴミの処理を管理してくれたりもするが、無料のキャンプ場で管理人もいない場合は、キャンパーの良心に任される。今回のように、人間を怖がらない狸がキャンプ場エリアをうろついているということは、そこに食料があるからだ。過去に誰かが食べ物を与えたり、炊事場に残飯を放置したりした結果だ。
小動物がキャンプエリアをうろつくようになれば、それを捕食する大きな動物もやってくる。結果、捕食動物はキャンプ場に来れば、逃げ回る小動物を追いかけなくとも人間が捨てた食料があることを学習する。
人間の姿=食料にありつける という図式が完成する。
四国や九州のように、熊がほとんどいない地域なら大きな被害は出ないが、北海道や本州の山間には至るところに熊がいる。
本来、熊は臆病な性格で、人目に触れないように行動している。嗅覚も聴覚も非常に優れているので、山中でも人の気配を感じ取ると草むらに隠れじっと観察している程度だった。なので熊対策としては、山に入るときは鈴を鳴らしたりラジオをかけたりして、人間の気配を熊が事前に察知できるように仕向けていた。
従来の熊被害は、そのような対策をしていなかった人間と熊が突然出会い、熊がパニックになって襲ってくるという事例が大半だ。ところが近年の熊被害は町中でも起こるようになってきた。
ニュージェネレーション
熊が町中まで出没し、人間を襲うようになった理由は色々考えられるが、専門家ではないので、一要因として感じたことを綴ってみる。
去年、大雪山系を縦走したとき、山小屋のスタッフが羆について色々教えてくれた。
大雪山系の羆はもともと臆病な性格で、縦走路を人間が歩いていると、近くにいても草むらに隠れてしまうらしい。確かに、遠目に羆を目撃しても、その地点まで来ると羆は気配を消していた(獣臭は残っていたが)。餌についても、山にいる羆は雑食で普段は木の実などを食べている。標高の高いエリアより餌のある森林限界以下をうろついていることのほうが多い。それでも食料の匂いを求め山小屋付近にやってくることはあるので、食料は少し離れた専用の保管庫で保管し、キッチリと蓋を締めて保管している。大雪山系を縦走するような登山者はある程度の経験者なので、食料管理はしっかりしている。縦走中に食料を放置することは、たとえ飴玉の小さな袋でも、ポケットにしまい込む。
このように人間が適切に距離を取り行動することで、人間と野生動物が境界線を超えることなく共存してきた。
なので、大雪山系の縦走路で羆の被害に遭うことは滅多にないらしい。
ところが最近、野生動物に新たな世代が出てきたようだ。
前述のように、キャンプ場に来れば食料が手に入ることを学習した若い個体が、人間を恐れなくなってきたのだ。それどころか人間の近くには食べ物があるということを学習してしまったようだ。
本来の餌である山の木の実が豊作ならば、腹を空かすことはないだろうが、近年は猛暑の影響なのか、餌となるドングリ類が毎年凶作となっているようだ。腹を空かせた好奇心旺盛な若い個体が、山中の縄張りを歩き回ってドングリが食べられなかったら、残飯豊富なキャンプ場を徘徊するのは当然の流れだ。
そうすると人間を恐れなくなった個体が山を降り、町中まで出張すればさらなるご馳走、庭に植えた柿の木やりんごの木、自宅前に置いてある回収前のゴミ袋etc、、、
それまで味わったことがないような食事にありつけることを学習すれば、そりゃぁ、冒険がてら餌を求めて山を降りてくるわいな。
今年の熊被害は過去最高の件数を記録し、人が食い殺される事件も各地で相次いでいる。自治体が加害熊を殺処分すると非難の電話が殺到するとのことだが、以前のような適度な共存関係を保てなくなっている現状では、殺処分もやむを得ないだろう。
頑なに保護を訴えている人は、自分が朝起きて玄関を開けたら、目の前に熊がいる状況を想像したほうがいい。腕を軽く一振りするだけで顔をえぐられるくらい力が強く、爪は鋭い。
たとえ子熊であっても見た目可愛いが、子熊の近くには必ず母熊が見守っている。そんな状況下、可愛いからと子熊に近づこうものなら、我が子が襲われそうと勘違いした母熊が子供を守ろうと襲ってくるのだ。
野生の熊はアニメに出てくるクマのプーさんではない。
とは言え、大規模な山狩りを行うのも行き過ぎだ。
もともと山中は野生動物の生息地で、人間はそこにお邪魔する立場。以前のような適度な距離を保てるようにするため何らかの対策を講じる必要があるが、これだけ被害が拡大してしまっては、獣害対応を自治体任せではもはや追いつかない。国レベルで対応していく必要がある。そうすると膨大な時間がかかるだろう。自然のリズムを直ちに変える能力は人間にはない。地道に、真剣に腰を据え取り組まざるを得ないだろう。
そんななか、個人がすぐにでもできることがある。
山中でのマナーを守ることだ。
・たとえ飴玉一つであっても絶対に捨てない。
・キャンプ時の残飯処理を適切に行う。
・可愛いからと餌付けをしない
・野生動物とは距離を取る
当たり前とされてきたことを当たり前にやる。
たったこれだけのことすらできないようなら、アウトドアに楽しみを求めるのはやめた方がいい。
以前は登山時に鈴やラジオは必須だったが、最近の熊には逆効果な場合もあるようだ。
人口音=人間
という図式なので、最近の熊はむしろ餌を手に入れられると思い近づいてくる場合もあるようだ。そうなると、個人でできる最後の手段は熊スプレーくらいだろうか。
値は張るし嵩張るが、命には変えられない。
携帯用手のひらサイズのほうは熊に効くか微妙だが、無いよりはマシ?
たとえ助かっても大怪我を負い、その後の人生に暗い影を落とすことを考えると、これからの登山やキャンプの必需品と言えそうだ。
とは言え、いざ熊と遭遇したらスプレーをまともに使えるだろうか?
慌ててウッカリ逆噴射させてしまい自爆してしまったら、唐辛子風味に味付けされた生贄に様変わりしてしまう。
紅葉シーズンがピークを過ぎ、冬山の季節がそろそろやってくる。
落ち葉の絨毯を踏みしめながら、木漏れ日の中を歩くのはとても楽しいが、今年の冬は暖冬の予測が出ている。それに付け加えドングリ類が凶作で熊が十分な栄養を取れない状況も重なっている。
そういう状況だと、北海道では冬眠しない羆が出現し、【穴持たず】と呼ばれ非常に恐れられている。
たっぷりの栄養を取れず、冬眠しそこなった飢えた羆が冬枯れの山中で餌を求めさまよい歩くのだ。
絶対に出会いたくない存在だ。
本州のツキノワグマはどうか?
素直に冬眠してくれることを祈ろう。
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