契約

handshake コロナ関連

山形から戻り数日間は泥のように眠った。無意識に疲れが溜まっていたようだ。
山形に比べると格段に温かい東京の春の日差しの中、布団に包まれながらウニウニしているとラインが届いた。
春の契約更新のため近日中に出社してほしいとのこと。

今の会社から仕事を頂くようになって15年程になるが、個人事業主として依頼された仕事を包括的に請け負うという契約内容で、毎年春と秋に契約内容を見直すことになっている。
実際は契約更新の書類に判子を押すだけ、という形式的な内容で毎年問題なく契約更新していたが、コロナの影響で昨年は契約打ち切りを覚悟していた。

コロナ以前から依頼案件が減ってきてはいたが、そこにコロナの影響が重なり、圧倒的に月の稼働率が落ちてしまっていた。普通に考えればいつ打ち切りになってもおかしくない状況だ。

昨年秋の契約交渉は流石に打ち切りを覚悟して臨んだが、有り難いことに引き続き契約更新となった。多少の金額ダウンはあったものの、引き続き仕事を続けられることに正直、安堵した。
とはいえ、コロナの影響がいつまで続くかわからない現状においては、現実的には突然の打ち切りが脳裏をよぎる中、久しぶりに日本橋にある会社へ顔を出すことになった。

西日暮里で地下鉄を降り、日本橋までウォーキングしながら街並み散策をしていたが、半年前は賑わっていた飲食店がいくつも閉店していた。じわじわと繁華街の街並みもコロナに蝕まれているようだ。
一抹の不安がよぎる中、オフィスに入ると全ての机が透明なパーテーションで仕切られており、半分以上が空席だった。出社しなくても大丈夫な社員はテレワーク中ということだ。
自身も訪問先に行かないときは社内でデスクワークをこなすこともあったが、コロナになってから出社することもなくなっていた。とりあえず自分の机はまだ存在していた。
暫くすると部長がやってきて世間話を始め、その後、何事もなかったように契約書類を置いて自席に戻っていった。
その後、事務担当の子が朱肉を持ってきたのでハンコを押しておしまい。
ハンコ文化は当分無くなりそうもない。

というわけで、あっけなく春の契約更新作業が終了した。
多少の波はあろうとも細かなことは気にされず、依頼された仕事をきっちりこなしている限り、続けていけそうだ。
これだけ長い間この仕事に携わっていられるのは、一言で言うと、居心地がいいからなのだ。
それまでは超絶ブラックな会社の仕事に携わっていたが、なんともホワイトな会社なので、これからも打ち切りになるまでは続けようと思う。

東京の桜は殆ど散ってしまっていたが、かろうじて残っていた満開の桜を見上げ胸をなでおろした。

  

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