年末の風物詩 -心の洗濯-

ウェルネス

2023年も気がつけば年末。今年もあっという間に過ぎてしまった。

去年からゆるRUNをメインにのんびり走を楽しんでいたら、いつの間にかハーフの距離を余裕で走れるくらい体力が付いてきた。その勢いで夏を乗り切ろうと思っていたが、あまりの暑さに完全な夏バテで体調を崩し、生まれて初めて24時間冷房の部屋でダラダラと過ごしていたら、まさかのコロナに感染してしまった

熱自体はすぐに収まったが、味覚や嗅覚が麻痺してしまい、喉の痛みも取れず、結局1ヶ月以上症状に悩まされ、気がついたら冬になっていた。

ここ数十年、風邪ひとつ引くことなく健康的に過ごしていたので、かなり落ち込んだ。

とは言え、過ぎ去った過去のことを悔やんでも仕方がない。キチンと反省し今後に活かそう。

ということで今年の冬は無理をせず、部屋で大人しく音楽でも聞きながら過ごし来年に備えることにした。

Beethoven交響曲第9番 歓喜の詩

日本の年末を象徴する音楽で、コロナ以前は年の瀬になると日本各地で演奏会が開かれていた。コロナ禍の数年は中止となってしまったが、今年あたりは盛大に催されるようだ。最終楽章の合唱を聞いて(あるいは歌って)勇気をもらい、元気に新年を迎えようという趣旨なのだろうが、年末にこの曲を聞く風習は日本だけのようだ。

確かに、コロナのパンデミックが収束に向かい、心機一転して未来に向かうにはうってつけのような曲ではあるが、、、

この曲を年末に演奏するのが流行りだしたのは、昭和の時代からだ。

古き良き時代、皆が同じような足並みで突っ走り、世の中の出来事はテレビか新聞でしか知ることができず、島国のごく限られた世界が全てだった。

時は流れ、世界中の出来事を個人の携帯端末で瞬時に知ることができるようになると、そのあまりの情報量に圧倒され、右往左往し、振り回されるようになってしまった。

個人が宇宙旅行に行けるようになったり、1,000億円を超える契約金を手にするようなスポーツ選手が現れたりと、人々に壮大な夢を与えてくれている。

反面、世界の各地では戦争が終わることなく続き、憎しみの連鎖が増幅している。

毎晩8億人を超える人々が飢餓に襲われ、眠れぬ夜を過ごしている。

国を捨て、命がけで避難する人々は後を絶たない。

振れ幅が大きすぎて想像もつかないが、

どの地域で、どこの国で、どの親のもとで生まれたか?

国ガチャや親ガチャは人の人生を大きく左右する。

世界中の出来事を身近に感じ取れるようになった頃から、自分の中では年末に聞く曲は歓喜の歌ではなく、この曲を聞くようになった。

マタイ受難曲

イエス・キリスト最後の数日間を歌と音楽で表現した傑作。

聖書やキリスト教に馴染みがないと、取っ付きにくかったり分かりづらかったりするが、この曲には宗教を超え、あらゆる人間が共感できる人の心の弱さ、儚さ、醜さ、そして強さが見事に表現されている。

エバンジェリスト(語り部)の説明とともに2つのオーケストラ、独奏、合唱、独唱が当時考えられる最大の編成で作曲され、演奏時間は3時間にも及ぶ。

今どきの映画は二時間程度なのと比較すると、異様に長い!

しかも歌詞がドイツ語なのでわからない!

と聴く前は恐れ多くて尻込みしてしまう。

かく言う自分も、初めてこの曲のさわり部分を聞いたのは映画の中でのことだった。

【カジノ】デ・ニーロ主演

冒頭の衝撃的なシーンでこの曲の最終曲が使われたのだが、人間の業の深さを見事に描いた内容で、映画を観終わるやいなや、全曲を聞いてみたくなりCDを手に入れたのだった。

いざ聴いてみると確かに3時間は長いが、演奏時間に関しては二部構成になっているので途中休憩できるし(部屋で聞く場合はいつ休憩しても良い)、言葉の問題も字幕を見ればとりあえず理解はできる(聖書の解釈は難しいが)。

解説書の歌詞を読みながらであったが、あまりにも美しい旋律の数々が次から次へと歌われ、奏でられてくるので、気がつくとあっという間に最終曲になり、余韻の浸りながらウルウルしている自分がそこにいた。

以降、色々な指揮者やオーケストラの曲を聴き比べてきたが、曲の性質からなのか、皆が精魂込めて奏でているようで、どれも甲乙付け難い魅力にあふれている。

そんななかでもお勧めなのがコチラ

本来の演奏会形式とは一線を画したオペラ的な演出が取り入られており、聞いている側は演劇や映画を観ているような感覚で聴けるので、とてもわかり易い。

それにしてもベルリン・フィルというのは何を演奏しても感心してしまうくらい上手い!
ソリストは無論のこと、合唱団も一人ひとりが役者になりきっていて、スピーカーで聞いているだけのときと比べ、何倍も内容が伝わってくる。

第一部は斬新な演出に緊張しているのか、いま一つエンジンがアイドル状態な感じだが、第二部に入るとエンジン全開でグイグイと観るものを引き付けながら進んでいく。なかでも、ヴァイオリンのソロをバックにアルトが歌う名場面や、鞭を打たれながら歩き続けるシーンなどは涙無くしては観られない。

発売当時はブルーレイ版だったが、あっという間に売り切れ廃盤になってしまった。その後、装丁が代わりブルーレイ+DVD版が販売されるようになったが、値段が倍以上になっている。それだけ人気なのだろう。初めて聞く場合は日本語の字幕が選択できるので、舞台効果と相まって内容がとても良く伝わってくる。ブルーレイで視聴した場合サラウンド効果が抜群で、ベルリン・フィルハーモニーホールの特性が十分生かされ、歌い手の音声が四方八方から降り注いでくる。観て良し、聴いて良しの一枚だ。

上記以外で最近のお気に入りはコチラ

当時と同じ少人数編成、古楽器を使い、一人ひとりのレベルが際立っており、とんでもなく美しい響きを奏でている。You Tubeでは字幕がないがCD版には解説書が付いているので初めて聞く場合も参考になる。

この曲はBGM感覚でお気軽に聞くような曲ではないが、日々の疲れはシャワーやお風呂で済ませても、1年間の疲れを癒やしたいようなときには鄙びた湯治宿でじっくりと温泉に浸かりたい。でも、行っている時間がない。

そういうときにはピッタリの曲だ。

一家に一枚、心の常備薬として置いて損はない。

地球規模で変化の兆しを見せ、人々の価値観が大きく揺らぎ始めている近年、どういう方向に進んでいくのか全く見渡せないが、未来のことを不安がっていてもしょうがない。今できることを精一杯行い、心のビタミンをタップリと補給しておこう。

年末の大掃除は早めに済ませ、大晦日はこの曲を聞いて2023年を締めくくるとしよう。

 

良いお年を!

 

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