出張先での休日は登山や旅ランなどで過ごすことが多い。
今回も六甲山縦走を予定していたが、あいにく終日雨模様のためホテルに缶詰だ。緊急事態宣言中に繁華街をぶらつくわけにも行かず部屋で大人しく過ごしているが、昼ごはんの買い出しに外出するとアウトドアメーカーを代表する二大ブランドがホテルの直ぐ近くにあった。
旧居留地には他にもノースフェイスやアークテリクスといった人気ブランドが集中している。
各地を転々としていると旅先で衣服やOD缶を調達したり、リペアをお願いしたりする機会がでてくるが、その点、このエリアはすべて事足りるようだ。
今回は人気のアウトドアメーカー、パタゴニアとモンベルについて、
その企業理念と取り組みの違いのお話。
パタゴニアの代表作
パタゴニアを代表するウェアにRシリーズというのがある。
テクニカルラインに属し、レギュレーターのRを表したフリース製の行動着の略だが、数字が大きくなるほど保温性重視という区分けで、かつては寒さや運動量に合わせてR0.5からR4まで最強のラインナップを揃えていた(現在は0.5と3、4は廃盤になってしまったか?)
ここ数年はR1とR2が商品展開している。
一応全て持っているが、R3以上は行動着で着用するには暑すぎるのでどちらかというと街着になってしまった。厳冬期の冬山専用といった感。
R1は一番薄いタイプのフリースで激しい運動時には大変使い勝手がいい。
真夏の高山や真冬の旅ランなどでは寒くなく、汗抜けも抜群のため着心地がすこぶるいいのだ。3シーズン+高山などで汗をかくことが想定される時は旅行バッグに必ず忍ばせている。
一方のR2は3シーズン活躍するタイプで山でも街でも出番が一番多いフリースだ。
生地の表面はR1とは全く異なり、動物の体毛のような質感で大変柔らかい。その分厚みはR1よりあるが風抜けはR2のほうがいい。冷たい風が吹き付ける時はウィンドブレーカー一枚羽織ればすぐに暖かくなり、汗抜けがすこぶる良いので激しく動いていても汗をどんどん発散してくれる。
どんなときでも暑すぎず寒すぎず、絶妙な体温状態をキープしてくれるので冬の出張中はR2があれば寒さ対策は事足りる。
普段は各地へ出張した際にパタゴニアの直営店で購入することが多いが、近くに直営店がないような場合はこちらのお店が取り扱っているアイテム数も多く、直営店よりも送料無料ラインが低く設定されている。直営店にはないポイント付与サービスが付くのも購買欲をくすぐってくれる。
↓↓↓↓↓
10年以上着続けているフリースを修理に出す。
そのR2、所有しているのは10年以上前に購入した毛足の長いタイプで、未だに現役で大活躍している。というか、他のフリースは着る気になれないくらい着心地が素晴らしいのだ。大変気に入ったのでその後色違いをもう一着買ってしまったくらいだ。
その後、デザインが大幅に変更され、現行のR2は毛足が短くなりデザインやシルエットが一層洗練されてきたが、それでも当時のR2がいいのだ。
なぜなら、当時のパタゴニア製品は信じられないくらい耐久性が高く、他のベースレイヤーなども糸クズ一つほつれること無く、何千回洗濯しても未だにヨレること無く首も伸びていない。
気に入ったものを長く使用するという性格の方は中古のパタゴニアを手に入れても失望することはないだろう。
そんな耐久性抜群のパタゴニアのR2だが、ついに綻びが生じてきた。
場所は本体とファスナー付きポケットを繋ぐ箇所。
R2は糸でポケット部分を縫い付けるのではなく、ポケットのファスナーと本体を圧着する製法で作られている。
今ではどのアウトドアメーカーもこの製法を採用するようになったが、当時としては画期的だったのだ。
その圧着箇所がついに剥がれてしまったのだ。
とはいえ、それ以外は未だに糸くずの綻び一つなく、表面のフリースも使用感こそあるがペシャンコにもなっていないため信じられないくらい耐久性が高い製品だと思う。
カスタマーセンターに連絡すると、テクニカルラインは何年経ってもリペア可能で、郵送なり持参なりしてくれれば1週間ほどで送り返してもらえるとのことだ。
出張直前に破損が判明したため着用した状態で神戸入りし、ホテルにチェックイン後、直ちに店舗に向かい修理に出すことにした。
コロナの影響で予約しなければ店内に入れないようで、予めWEB上で予約してから店舗に向かった。
旧居留地内にあるパタゴニア神戸店は他の店舗とは違い高級アパレルブランドのような店構えだ。この場所の雰囲気にマッチしている。
店頭で店員さんに予約番号を告げ、店内に入りカウンターで手続きを行う。
感心したのが、修理伝票の選択欄に色優先か機能優先かチョイス出来る欄があることだ。
古い製品などで同じ色の生地が無い場合は違う色の生地で代用することも可能ということらしい。
パタゴニアのカタログを観ているとモデルさんが何年も着古した継ぎ接ぎだらけのパッチワークのようなウェアを着ているが、こういうことだったのだ。
愛着の湧く製品は何年でも着続けることが可能。これがパタゴニアの大きな特徴だろう。
↓↓↓↓↓
パタゴニアの製品をより長く使っていただくためのプラットフォーム
↑↑↑↑↑
大量生産大量消費社会のアメリカ企業の中では異質の存在だと思うが、モノを大切にするというのは大変素晴らしいことだ。
店員さんが手続きしている間に店内をぶらついてみたが、他のパタゴニア店舗に比べ広くゆったりした空間で品揃えも豊富だ。都内の大崎店の次くらい?
ここ数年、カジュアルラインやワークライン、アクセサリー類も品揃えがどんどん豊富になり、総合アパレルメーカー的な方向に向かっているような感じだが、どれもデザインやカラーが素晴らしく、手に取ると何着でも買いたくなってしまう衝動にかられてしまう。
いかん、いかん、今日は修理に出すだけだ。
必死に自分に言い聞かせ店を後にした。
店頭では寒空の下、相変わらず店員さんが笑顔で入店チェックをしていた。
きっと寒さに対するトレーニングの一環なのだろう。
いや、温かいパタゴニアの製品を身に纏っているので寒さなんて感じてないはずだ、、、
モンベルの特徴
通りを挟んだ向かいにはモンベル 神戸三宮店が軒を構えている。
ここ数年、怒涛の出店ラッシュのようで、各地の登山口にも新規店舗が続々とオープンしており、飛行機には持ち込めないOD缶や登山用品の調達などで大変重宝している。
さすが日本一のアウトドアメーカーだ。
いや、世界進出も進めているようなのでアウトドア界のユニクロを目指しているのか?
せっかくなので入ってみた。
予約制では無いようで直ぐに入店することができた。
通り向かいなのに理念の違いが既に現れている。
モンベルの特徴といえば、高機能なのにリーズナブルというのが一番の特徴だろう。同じようなカテゴリーの製品がパタゴニアの半額程度で手に入る。
どちらも機能的には遜色ないレベルだと思うので、後はデザインや色味の好みで選ぶことになるが、こればっかりはお国柄がモロに出ているような気がする。
モンベルのカラー、デザインは、、、
それでも最近は頑張っていると思う。
今回モンベルに入ったのは、来月からの東北出張で履いていく暖パンツを試着してみようと思ったからだ。
今まではパタゴニアのロング丈サイズのパンツを履いていたが、数年前から取り扱わなくなってしまった。アメリカ本国ではロング丈もサイズ展開しているのだが日本には入ってこないらしい。
高身長のヒョロっとした体型の若者も増えているのだからパタゴニア日本さん頑張って仕入れてください! 履けるサイズがなくて困っています。
一方、最近のモンベルは標準サイズ以外もUSサイズやロング丈がサイズ展開に加わるようになったので、あらゆる体型をカバー出来るようになってきたようだ。
ようやく自分の体型に合ったサイズがリーズナブルに手に入るのでは?と密かな期待を抱いていたのだ。
商品のディスプレイなどはパタゴニアに比べると所狭しと並べてあるので探し出すのが大変だ。こういう時は商品知識の豊富な店員さんにお願いしよう。
がしかし、目的のパンツは残念ながら希望するサイズはなかった。
ここで諦めたら真冬の東北で寒い思いをしなくてはならないので、店員さんに希望サイズを伝えると直ぐに近隣店舗から取り寄せてもらえるとのことだ。
さすが多店舗展開していることのメリットが十分に発揮されている。
で、休日の今日、受け取りに行くと久々に長さの丁度いいパンツを履くことができた。
今まではモンベルのウェアはサイズが合わなかったので完全スルーだったが、これからは色味やシルエットなどは妥協するとしても選択肢として十分に検討対象になりそうだ。
企業理念の明確な違い
因みに、一月ほど前にモンベル製のシュラフカバーのリペアをお願いしたことがあった。
ファスナー部の防水シームテープが剥離してしまったという、今回のR2と同じような劣化状況だった。しかしR2より遥かに新しく使用頻度も低いにもかかわらず、意外とテキトーと言われているパタゴニアより早く劣化してしまったという結果になってしまった。
行動着とシュラフカバーということでカテゴリーがぜんぜん違うため単純に比較することはできないと思うが、MADE IN JAPANの品質は過去の栄光なのだろうか?
更に残念なことに、1週間ほどで修理見積もりの回答を電話で頂いたが、古すぎて修理不可能のため新品を購入することを勧められてしまった。
MADE IN JAPANの職人魂は消えてしまったのだろうか?
おそらく勝手な自己解釈だが、新品時と同等の性能を発揮することができないようなリペアはモンベル品質にそぐわないという判断がくだされたのだろうか。
もちろん、厳しい品質基準のもとに最高のコンディションで使ってほしいという考えは十分に理解できるが、例えば、シームテープでピッタリと圧着するのは不可能だが、代替案として多少の水分が染み込む恐れがあるが〇〇○という方法だとまだ使えると思いますがいかがでしょうか?
こういう提案をしてもらえると顧客満足度は120%UPなのだが、、、
次々に出てくる新製品の良さを満喫する人がいる一方で、古くなっても壊れても、直せるのなら直して使い続けたい人も中にはいて、そういう人の気持ちというのは、たとえ性能が落ちたとしてもそんなことは百も承知。ボロボロになっても一層愛着が湧き、完全に寿命が来るまで使い倒してみようという思いで使っているのだ。
モノを単にモノとして捉えているのではなく、同じ時を刻むパートナー的な感じ?
断捨離が盛んな今の時代だが、自身も数年前にCDや本を大量に断舎離した。
それでも捨てられないモノだって中にはある。
執着とは違う。
本当に好きなもの、大切に思えるようなものは一生そばに置いて置きたいのだ。
大切に使い続ける努力を試みる企業と、
消耗したら使い捨て新品を勧める企業。
これからの時代に評価されるのはどちらだろう?
追記:2023年 名品のR2が、、、
先日、長年愛用しているDASパーカのリペアをしてもらおうと、都内の直営店に向かった。
骨まで凍みる寒さの日々から予定外のビバークまで、あらゆる状況で活躍する究極のビレイ用パーカ。エアロゲルを取り込んだクロス・コア・テクノロジー採用のプリマロフト・ゴールド・インサレーション・エコは、ダウンのようなやわらかさとコンパクトさを備えながら、濡れても温かいという化繊の重要な機能性を提供。フェアトレード・サーティファイドの縫製を採用
10年以上前、初めての冬山で死にそうになった経験から、下山後に速攻でポチったフカフカのパーカーだ。
未だに生地の痛みは無くロフトも十分で、年明けの寒い日々も快適に過ごしていたが、ついにドローコードを固定するプラスチックの留具が破損してしまった。着心地は全く問題ないのだが、さすがにプラスチックのパーツは経年劣化が避けられないようで、頭部のフィット感や裾の絞り込みができなくなってしまった。スタッフに相談すると、パーツ以外の縫製箇所なども丁寧に確認してくれた。幸い、破損したパーツは交換が可能ということで、3箇所の留具をリペアしてもらう手続きを取ることにした。
スタッフ曰く、この時代のDASパーカーは何度も何度も修理して着続ける人が多いそうな。
最近のDASパーカはスマートなシルエットに変わってしまったが、ハードシェルの上から羽織っても余裕のあるシルエット(というか、そういう着方を想定している)の旧DASパーカは相変わらず人気があるようで、未だに古着市場でも高値安定の名品なのだ。
良いのもは何年経っても良いのだ!
そんなこんなで和やかに世間話をしていると、ふと疑問に思ったことを聞いてみた。
そう言えば、最近はWEBページにR2が出ていないようなんですが?
実は、R2は廃盤になってしまいまして、、、
えぇーーーーーーっ!
なんで?
抜け毛問題が解決できないみたいです。
R2の特徴である毛皮のような表面のモコモコの毛が抜けてくるらしいのだ。
自分が所有している旧R2は表面の毛が抜けるようなことは全く無く、未だに現役大活躍中だ。
その後の短毛スマートシルエットにバージョンアップした新型R2はザックのストラップなどで頻繁に擦れることで負荷がかかり、その部分が剥げてくるらしい。
近年、patagoniaはリサイクル生地の使用に力を入れていて、去年辺りから製品の多くがリサイクル生地に入れ替わっているとのこと。
ただ、リサイクル生地の短所として耐久性が今一つのようで、色々試行錯誤を重ねている段階らしいのだ。
店内を眺めてみると、以前はカラフルな生地が多くディスプレイされていたが、最近は地味目の色見ばかりになってきた。それだけリサイクル生地の色染めも難しいということなのだろうか。
それでも、敢えてリサイクル生地を全面に押し出す姿勢はユーザーとして評価しよう。試行錯誤を繰り返し、クオリティが上がるその日を楽しみに、新たなR2が出てくることを願うばかりだ。
そんなことを思いながら帰路に着いた。
R2が消えてしまった今となっては、中古の市場がますますヒートアップしそうな予感。
サイズや色味が気に入ったらポチって損はないかも
コメント