出張の合間にデトックスキャンプ -酸ヶ湯温泉キャンプ場-

キャンプ

北海道最西端から戻ったあとに再び函館出張、そして翌週は仙台で仕事。途中、週末を酸ヶ湯温泉キャンプ場で名湯に浸かりながら中休み。

函館山は観光客でごった返していた。

四半世紀ぶりに訪れた函館は駅前も大きく様変わりし、ホテルが乱立していた。

仕事が早めに終わった日は夕方からウォーキングで函館山に登ってきた。

日が沈み始めたころに山頂の展望台にたどり着くと、夕暮れの爽やかな風が山肌を駆け上り、程よく汗をかいた体を冷やしてくれる。すでに観光客が手頃な場所に陣取り、暮れゆく景色を楽しんでいる。
適当な場所に座り込み、眼下に行き交う船を眺めながら時を過ごしていると、ロープウェイ、バス、タクシーから続々と観光客が溢れ出てくる。

気がつくと展望台はごった返していた。
警備員が拡声器で交通整理の声をがなりたてている。その指示に従いゾロゾロと観光客が進んでいく。

日が沈むと一気に夜景が広がり、百万弗の夜景に相応しいパノラマが眼下に広がるが、展望台は押し合いへし合いしながら観光客が列をなし、所々で色々な言語の怒声が飛び交っている。風情も何もあったものではない。

昔来たときはこんなに人がいなかったような、、、

コロナ禍が明け、一気に観光客が戻ってきたようだ。

最終のバスは長蛇の列が予想されたので、数本前のバスで早々に退散。

夜景を引き立たせるためにバスの車内は真っ暗だった。

函館の駅前でバスを降りると急に閑散とした町並みに変わり、さっきまでの人混みが嘘のように、地方の寂れた都市の姿がそこにあった。とは言え、函館山がある限り、このエリアは当分大丈夫だろう。

函館で数日間仕事をこなし、週末は青森の酸ヶ湯温泉キャンプ場で出張の中休みを摂ることにした。

雨のキャンプ場はゆったりとした時間が流れる。

金曜の朝に函館から新幹線で新青森へ、そこからバスで1時間ほど揺られると東北を代表する名湯、酸ヶ湯温泉にたどり着く。


酸ヶ湯温泉キャンプ場は温泉宿の道路を挟み、向かい側がキャンプ場になっている。徒歩キャンパーにとっては非常にアクセスがいい場所だ。
去年の秋に来たときはフリーサイトに宿泊したが、今回は奥まった場所にある固定サイト。隣との距離も程よく隔てられており、プライベート感覚を楽しめるエリアだ。

九州地方を中心とした線上降雨帯が各地に災害の爪痕を残している。ここ青森も今にも雨が降ってきそうな気配だ。天気予報は午後から雨ということだったが、昼過ぎに設営を終えると、ちょうど雨が降ってきた。

ポツポツと雨粒がタープに当たる音がなんとも心地良い。

函館のセコマで見つけたサッポロ一番シリーズの北海道限定ラーメン。普通の味噌ラーメンよりピリ辛でコクが有り美味かった。普通の味噌より好みの味だ。

食後の一休みはお約束の珈琲タイム。その後、向かいの酸ヶ湯温泉でマッタリと疲れを癒やす。
酸ヶ湯温泉が運営しているキャンプ場ということで、キャンプ宿泊者には温泉割引チケットを利用することができる。館内の居心地のいいラウンジも利用できるので、雨の日などは助かる。


浴場入口の広間には季節ごとに違うテーマのねぶたが飾られており、毎回目を楽しませてくれる。硫黄の匂いを体中から発散させながらテントに戻ると、この日は貸し切りのようで、静かな雨がテントを包み、穏やかな時間が過ぎていく。

キャンプ場に戻り管理人と世間話をしていると、前日に熊が出たようだ。

最近は多くのキャンプ場で熊の出没が相次いでいる。食料の管理は徹底したいところ。
持参する食料も匂いの強い食材は控え、ジップロックで二重に密閉し管理を徹底する。テント付近に匂いの出る食料やゴミを置くようなことは厳禁。管理棟脇にある鍵付きのゴミ捨て場に捨てることを忘れてはならない。

ソロでキャンプをしていると、万が一のトラブルも全て一人で解決しなければならない。リスクを増やすような事はできるだけ控えるようにしている。なので、食事もシンプルに済ませることが多い。できるだけ食材を余らせずに使い切る。

そういう事情を考慮すると自ずとメニューは決まってくる。

シンプルステーキ

最近は色々な調味スパイスが出回っているようだが、やっぱり塩、胡椒の組み合わせが一番美味い。

その後はホルモンを焼き、残りにオートミールを投入しホルモン鍋にして完食!
シンプルな男飯を味わい尽くす。

今回は焚き火はせずアルストと固形燃料で調理したが、この万能フライパンはソロキャンパーにとって一番使い勝手がいい。

袋ラーメンがちょうど入る直径で、一人鍋ができる程度の深みもある。焦げ付き防止のコーティングがしてあるので、ご飯を炊いても調理後はウェットティッシュで軽く拭けばあっという間に汚れが落ちるので、水場がないような山岳地帯でも清潔に使える。
浅型と深型があるが、調理のバリエーションが増えるので、深型に軍配。蓋が別売だが、あるとないのとでは大違い。ここはセットで揃えるところ。

ソロキャンプでこれ以上のクッカー、フライパンは今のところお目にかかれない。コーティングがそろそろ剥がれてきたが、きっとまた同じものをリピートすることだろう。

夕食を終えたあたりから雨風が強くなってきた。どうやら今夜は青森地方も荒れそうな気配だ。
タープを収納し、悪天候に備えるためガイラインをしっかりと張り直す。
日付を超える頃には雨風は更に強くなり、キャンプ地を取り囲むブナ林も大きくざわめき、時折大粒の雨がフライシートを叩きつける。この夜は貸し切りだったが、流石にこの暴風雨の中では熊が出ることはないだろう。きっと穴蔵に閉じこもってじっとしているに違いない。←安易な妄想

天気予報をネットで調べつつ、バッテリーが切れるまで仕事を片付ける。

結局、一晩中暴風雨の中で過ごすことになり、時折テントが大きく傾くようなこともあったが、このテントは少々の暴風雨くらいではびくともしないのだ。

台風直撃でも平気なテント

、、、数年前、九州の坊がつるキャンプ場で野営地の真上を台風が通り過ぎるということがあった。

九重連山に囲まれた広大な野営地で、登山口から二時間ほど樹林帯を進むと突然あたりが開け、広大な原っぱが姿を表す。
野営地は雨風を遮る木々もないため、晴れていれば満点のプラネタリウムを楽しめるが、ひとたび天候が荒れると風がまともに吹き付ける地形なのだ。

前日から台風が来ることは予想されていたが、野営地には頑丈な避難小屋もあり、更に源泉かけ流しの秘湯の宿も近くにあるので、最悪、避難すればいいかと思い幕営することにした。
案の定、広大な野営地は貸し切状態。秘湯の温泉も入浴客はおらず、ヤバそうならいつでも避難しに来てくださいと宿のスタッフが気遣ってくれた。

貸切状態の温泉で汗を流しテントに戻ると、雨風が次第に強くなってきた。
これ以上強くなる前に、打てるところ全てにペグを打ち強風に備える。フライシートの四隅はもちろん、特にインナーシートの四隅を地面との隙間ができないようにガッチリと固定する。こうしておけばテントの下に風が入り込み、風で持ち上がって吹っ飛ぶことを防止できる。

たまにテントが飛ばされているキャンパーを見かけるが、インナーシートの四隅をキッチリと固定していないことが原因だ。強風が予想されるときは面倒でもキッチリとペグダウンしよう。

完全防御を施した後は巣ごもり。
外の様子を見ることはできないが、音を聞いていると一大スペクタクルなサウンドが鳴り響いている。想像力がどんどん膨らんでいく。フライシートが破れるのではないか?と思うほどの強い雨がシートを叩き、不規則なドラムロールを奏でている。風はますます強くなり、あらゆる方向からテントを叩きつける。天井から吊るしたランプが大きく飛び跳ねる。

夜になると更に暴風雨が吹き荒れ、時折襲ってくる突風にテントが潰れるほどに大きくひしゃげ、ポールが折れてしまうのでは?と焦ったが、竹のようにしなり元の形に戻ろうとする。このテントは風をうまく受け流すデザインのようで、雨が降り込んでくることもなく、それでいて換気も十分に機能しているので結露もほとんどない。さすが、世界中で大人気になっただけのことはある。

深夜、車がエンストしたかのようにピタリと雨風が止んだ。
外に出てみると四方はどす黒い雨雲に覆われていたが、真上だけがプラネタリウムだった。

どうやら台風の目の中に入ったようだ。今のうちにテントの点検を行おう。
ガイラインが数本緩んでいたので張り直したくらいで、フライシートが傷んでいる様子はなかった。
その後、暴風雨の競演が再開し、結局、朝まで一睡もできなかった。

台風が過ぎ去った後は晴天。
フライシートを外し天日干しをする間、寝不足の体を休める。

・・・

テントを物色しているとき、見た瞬間に値段も気にせず一目惚れしてポチってしまったが、いい買い物だったと今でも思う。山で使う道具はケチってはいけない。

一つだけ欠点をあげるとするなら、アメリカ製のテントなので、日本のような高温多湿な環境下だとシートが劣化しやすいようだ。
シートに施している防水コーティングが加水分解を起こし、フライシートがベタベタしてくるとの口コミを多く見受けられるが、幸いにも加水分解は今のところ発生していない。

北米やヨーロッパのような乾燥地帯で作られている製品はやはり乾燥地帯で使用することを前提に作られていることが多い。これはテントに限った話ではなく、例えば昔々、HERMESのバッグが日本の高温多湿な環境下で使っていると接着剤が剥がれてベタベタしてくるとのクレームがあったようだ。今では対策が施されているようで、そのような事は発生しなくなっているようだが、それだけ日本の高温多湿な環境は製品にとって過酷な環境なのだろう。

日本製のテントを買えばそれなりの対策が施されているので問題ないのだが、日本製はサイズが微妙に小さいのだ。
寝袋の厚みを考慮すると斜めに寝ても足元と頭がテントの側面に着いてしまう。また高さも窮屈で座っているときは背中が曲がってしまい疲れる。

その点、このテントは独特な構造ゆえ内部の居住空間に圧迫感を感じることがない。
二人用なので寝転がっても余裕、天井高も90センチほどあるので背筋を伸ばして座ることができる。

今まで北海道から沖縄まで各地でキャンプを楽しんできたが、十分に元は取れたと思う。それでもフライシートはだいぶくたびれてきたが、まだまだ現役で使えそうだ。

汗と涙の思い出がたくさん詰まったテントなので、この先も使い続けていきたい。

白と赤の配色がとても気に入っているが、最近のモデルはフライシートがオリーブグリーンに変わってしまったようだ。白、再販してくれないかな、、、

あたり一面真っ白け

そんな状況下でも潰れることはなかったので、この日の暴風雨程度ではびくともしないことがわかっていた。
いつの間にか爆睡していた。気がつくと明け方には暴風雨も峠を超え、空が白み始める頃にフライシートをめくると、辺り一面を濃厚な霧が覆っていた。

二日目は八甲田山の登山を予定していたが、しばらく待ってみても霧は晴れるどころか益々濃くなっていく。時折雨も降ってくる空模様だったので登山は中止し、この日も温泉と読書で過ごすことにしよう。

キャンプでは何かをするのではなく、何もしないで過ごすほうにウェイトを置いたほうが楽しめる性分だ。

とりあえず今日も温泉に浸かり、ボンヤリと過ごす。
週末の酸ヶ湯温泉は客でごった返していることのほうが多いが、昨夜からの悪天候もあり昼頃に入浴した頃は貸し切り状態だった。湯口から静かに流れる源泉の音だけが広大な千人風呂に響く。

静かなひととき、最高の贅沢だ。

小雨が降りしきる中、体中から硫黄の匂いを発散させながらテントに戻る。
あとはタープの下で椅子にもたれ読書三昧、飽きたらテント内でゴロンと横になりストレッチしたり、瞑想したり。

紙媒体の本は数年前にほとんど断舎離してしまった。
小さい文字を読むのがしんどくなってきたのが一番の理由だが、紙だと今回のような雨混じりの霧キャンプで読書していると、湿気で紙がフニャフニャになってしまい、最悪、破れる。それに、旅行中に読むとなると長編物は嵩張る。

その点、電子書籍はタブレット一つで大量の本を持ち歩けるし、フォントを大きくしたり行間を調整できたり、明るさも調整できるので、暗闇の中でも文字をくっきりと認識できる。本当にアリガタイ。Amazon Kindleなら値段も安くお手軽に読めるが、たまたまiPad miniを持っていたのでKindleアプリを入れて活用している。iPadを忘れてもスマホでも読めるので本当に便利なアプリだ

晴れていれば満点の星空の下での読書だったが、テントの周りは白一色。

こんな時読みたくなるのはSFの宇宙モノ

三体

昨年購入し、久しぶりに何度も読み返したくなるような内容だ。

中国の作家が書いたSF小説で、世界的なベストセラーになった。
宇宙関連のSF映画ではコンタクトが一番好きなのだが、その対局にあるような内容で、
なぜ人類は未だ地球外生命体と出会うことはないのか?
この問いかけに対する答えを、時間軸や空間の広がりが壮大なスケールで話が進んでいく。

コンタクトを観た時は、いつか宇宙旅行に行ってみたいと想いを馳せていたが、三体はその想いを一変させた。死ぬまで大地にしっかりと足を着け、地球の生物として一生を終えたい。

時間が立つのも忘れて遥か彼方に想いを寄せながら読書に没頭できた。

最終日は一気に晴れ間が広がった。

山天気アルアルで、今回も撤収する頃に晴れてきた。タープやフライシートを乾かしながら荷物をまとめ、発つ鳥跡を濁さないようゴミなどを全て処理し、酸ヶ湯キャンプ場を後にした。

次の出張先、仙台の宿は湯治宿で二週間を過ごすことになる。

温泉の違いを楽しむとしよう。

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