真夜中、足音で目が覚めた。
縦走最終日の夜もいつの間にか眠っていたが、テントの横をひっきりなしに通る足音、と言うより地面から伝わる振動で目が覚めてしまった。
テント泊のマナー
初日の裏旭野営場ではほぼ貸し切りだったため無音の世界を満喫できた。
二日目の白雲岳野営場も縦走者の朝は早いため、日が暮れると辺りは静寂に包まれた。
最終日の黒岳野営場は難民キャンプ並みにテントが密集している。
そうなると、気になるのが音問題だ。
テント泊では予想以上に音が響く。
・初心者あるあるなのが、テント内でのガサガサ音
レジ袋のようなガサガサと音が出る袋を利用していると、衣服やグッズの出し入れの際に物凄く音が響くのだ。
そして、何故かレジ袋で出し入れしている人に限って、いつまでもいつまでもガサガサと音を立て出しては入れ、出しては入れを繰り返している。
それ、ものすごーく迷惑です。
解決策としては内容物によって数種類のスタッフバッグを利用する。
色々なサイズが有り、防水仕様のものもあるので、小屋泊やテント泊には必須の装備品だ。
・人が出す音
話し声
一つのテントでカップルや友人と寝床を共にするような場合、どんなに声を潜めボソボソと話していても、あるいは声を押し殺し動物の営みを楽しんでも、その音、思いっきり漏れてますよ!
幸い、今回は話し声が漏れてくることはなかったが、遠くのテントからラジオの音が漏れていた。
天気予報などを確認したいのだろうが、イヤフォンつければ解決できること。簡単にできる気配りです。
・生理現象
オナラなどはしょうがないとしても、大迷惑なのがイ・ビ・キ!
一日中歩きまわって疲れた体だとイビキも大きくなるようで、本人は爆睡していて気づいてないかもしれないが、周りで静かに寝たい人にとってはメチャクチャ迷惑だ。
イビキ防止グッズもいろいろ出回っているので、どれくらい効果があるか不明だが、せめて装着して寝るくらいの気配りはして欲しいものだ。
そうは言ってもどんな人がテント場にいるかわからない。
自分でできる防衛策として耳栓は必須のアイテムだ。
自衛できることは自衛しよう。
ヘッドランプは銃に匹敵する
テント場は日が暮れると真っ暗になる。
月が出ていればそれなりに明るいが、曇っていたりすると漆黒の闇に包まれる。
なのでヘッドランプは必須の装備になるが、問題はその使い方だ。
夜間にトイレなどに行く場合、周りをキョロキョロしながら歩くと頭の動きに連動してヘッドランプの光が他のテントを照らすことになる。
最近のヘッドランプは性能が上がって物凄く明るい。
その光がフライシートを突き抜け、瞼に当たると飛び上がるくらい眩しいのだ。
特に最近のLED光は白熱球と違い、目に突き刺さる光なのだ。
テント泊メインにする前は避難小屋泊をメインに縦走していたが、避難小屋泊をやめた理由の一つがこのヘッドランプの明かりだった。
気持ちよく寝ているときに顔の周りを何度も何度も眩しい光が行ったり来たりすると、それだけで目が覚めてしまいブチ切れる原因になる。
特に初心者は夜の山が珍しいのか、キョロキョロといつまでも周りを照らしていることが多い。
それ、大迷惑ですよ!
解決策としては、
まずは他のテントを照らさない(見ない)こと。
特に室内の明かりが灯っていないテント。
テント場には様々な登山者が集うことになる。中には早立ちのため到着後、直ぐに寝る人もいるし、疲労困憊で早めに就寝している人もいる。
なので夜の星空観察や散策も楽しいが、足元だけを照らすようにしよう。
次に、ヘッドランプに赤色モードが付いている場合は小屋の中やテント場ではそちらに切り替えよう!
光量はかなり落ちるが、照らされていない部分も含め全体がはっきり見えるようになる。これだけで照らされる側の眩しさもかなり軽減する。
ほんのちょっとの気配りと、装備の使い方を理解するだけで、混んでいるテント場やキャンプ場で誰もが快適に過ごせるようになる。
自分がされて嫌なことは周りにもやらない。
登山やキャンプに限らず、社会生活を営むうえでのイロハのイだ。
というわけで、音対策は速攻耳栓を装着したので、その後は静かに眠ることができた(それでもイビキは聞こえてくる)。
光害対策に関しては、幸い今回はアイマスクをせずともマナーの良い登山者に恵まれたようだ。
入口にテントを張った場合の懸念事項は解決できた。
北海道のキャンプ場やテント場は比較的マナーの良い利用者が多い気がする。
黒岳登頂
最終日の朝は寝不足気味での起床となった。
小屋横のトイレは長蛇の列ができている。
バイオトイレと携帯トイレブースを選ぶことができるが、皆バイオトイレ側を利用したいようだ。
今日は10時に下山し一風呂浴びて11時過ぎのバスに乗れば余裕を持って網走にたどり着くことができる。
残った食料で手早く朝食を済ませ、テントを撤収。
気のせいか、眠る前より密になっているような、、、
この狭いエリアで深夜に設営した登山者がいたのだろうか?
難民キャンプに別れを告げ、30分ほど登ると黒岳の頂上につく。
三泊四日の大雪山縦走最後の頂きだ。
も~満腹になりました!
というくらい縦走期間で最高の晴天に恵まれた。
もっとゆっくりしていたかったが7時前だというのに続々と登山者が登ってくる。
名残惜しい景色に別れを告げ、一路、下山ルートを降りていく。
麓でゆっくりしたかったのでトットコトットコと降りたかったが、麓から続々と登山者が登ってくるため、狭い登山道では立ち止まって道を譲ることになる。
登山道は登り優先なのだ。
団体などが登ってこようものなら一服できるくらい立ち止まることになる。
登りの数がどんどん増える頃、リフト乗り場に到着した。
このまま下山ルートを歩いたら予定時間をオーバーしそうだったので、ここは素直にリフトとロープウェイを乗り継ぎ、麓の層雲峡まで一気に降りることにした。
下山
9時半頃、麓の層雲峡温泉街に下山した。目標としていたドンピシャの時間だ。
下山後は普段全く飲まない炭酸飲料が無性に飲みたくなる。
北海道限定というファンタゴールデングレープを一気飲みして大雪山縦走の無事完走を祝う。
日帰り温泉の開館までご当地ドリンクで喉を潤し、LINEで下山報告を行った。
【黒岳の湯】は層雲峡の温泉街で唯一の日帰り温泉入浴施設で、10時からの一番風呂に入ることができた。
館内は掃除が行き届いており、内風呂の上階に露天風呂があった。
ぬるめの露天風呂にゆっっっくりと浸かっていると数日間の縦走疲れが一気に流れ出し、そのまま寝てしまいそうになる。
施設を出る頃、丁度良くバスの時間がやってきた。
ここから1時間ほどバスに揺られ上川駅まで向かうことになるが、車中は貸切状態だった。
早めに下山して大正解だ。
動き出すと同時に記憶がなくなり、目が覚めたら見知らぬ街の見知らぬ駅が見えてきた。
4日ぶりの街ご飯
お昼に上川駅に着いた。網走行の特急は1時間後。
温泉にゆっくり浸かったこともあり、腹の虫がグーグー鳴いている。
下山直後はいつも日本蕎麦が無性~っに食べたくなるのだが、切符購入時に親切な駅員さんに地元グルメを聞いてみると、ここはラーメンで町おこしをやっているとのこと。
奥からラーメンマップを持ってきてくれた。
違うんだよな~と思いつつマップ片手に駅を出た。
ここ最近はラーメンを食べたいと思うことがめっきり減ったが、空腹には敵わない。
駅から少し歩いた長年やっているラーメン屋さんに入ることにした。
一番人気の味噌ラーメン全部入にチャーシューをプラスしてもらった。
とんでもない量の肉厚チャーシューがてんこ盛りの器が目の前に現れた。完食できるか不安がよぎったが、
メチャクチャ美味い!!!
普段だと濃いかなと思える味付けだが、数日間エネルギー補給と言う名の餌を流し込み、大量の汗を流したあとは丁度いい味加減だった。
気がつけばスープも全て飲み干し完食していた。
そして網走へ
相変わらず天気は絶好調の快晴。
日差しは汗ばむくらい眩しいが、カラッとしているので駅まで心地よい食後の散歩で戻ってきた。
特急の到着時刻が近づいても駅には乗客らしき人が全くいない。
結局、上川駅で乗車したのは自分だけだった。
席に着くとディーゼルエンジンの振動が心地いいのか、食後の満腹感もあり再び夢の中。
まもなく~終点網走~の車内アナウンスで目が覚めた。
改札を通過し駅前に出ると、なんか遠くへ来たな~という感慨に包まれた。
駅前のホテルにチェックインすると、ホテルのサービスでツインの広い部屋にしくれた。
シングルだと狭すぎて荷物を広げられないが、ツインだとテントなどを広げて干すことができるのでラッキー!
ようやく登山靴を脱ぐことができた。
着ている衣服も全て脱ぎマッパになると、あらゆる緊張感から開放される瞬間だ。
山を登っていていつも実感するのが、
山の頂上を踏むことが登山なのではなく、
無事に下山し、自分の力で玄関までたどり着き登山靴を脱ぐまでが登山なのだ!
ということだ。
今回も久しぶりの縦走で重たいザックを担ぎ数日間を山の中で過ごしたが、大きな怪我もなく、無事に下山できたことに感謝の念が自然と湧いてきた。
今回は久々に全日程で最高の天気に恵まれた縦走登山となった。
最後まで大事な足を守ってくれた登山靴に感謝!
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