LIVEのお誘い -ひと足早く夏を先取り-

音楽

20代後半から30代前半にかけて参加していたバンドから、LIVEのお誘いが届いた。アマチュアで30年以上活動している、知る人ぞ知る老舗のバンドだ。
残念ながら出張が重なってしまったので行くことはできないが、当時を思い出すと懐かしい思いがこみ上げてくる。

アマチュアがこれだけ長く活動できる秘訣に迫ってみた。

暗黒時代

どん底に沈んでいた20代後半。

当時は完全に鬱状態で、眠剤を飲んでも効き目がなく。起きているのか寝ているのかもわからない状況。付き合いのあった友人関係も全て断ち、誰とも合わずに四畳半一間、バス・トイレ共同の廊下が傾いているボロアパートに籠もっていた。

そんなある日、高校時代の音楽仲間から電話がかかってきた。

ほとんど会話をした記憶もなかったので、声を聞いてもなんとなくうろ覚えの顔しか浮かんでこない。世間話などを交えながら今の状況などを話していたが、トロンボーンまだ吹いてるの~?という内容で、怪しい勧誘ではなさそうだった。

当時通っていた高校には吹奏楽部がなかったので、道場破りよろしく、トロンボーン担いで単独で他校へ乗り込み、初見でソロを吹いていつの間にかレギュラーになっていたり、かなり異質な存在で目立っていた。そんな自分のことを、都内で毎年開かれる各高校合同演奏会で覚えていたらしく、共通の友人のつてを頼って連絡してきてくれたのだった。

 

その気心が嬉しかった。

 

とはいえ、高校卒業後は楽器演奏からも完全に遠ざかっており、まともに吹ける自信はなかった。それでも何年も会っていない音楽仲間から連絡をもらえたこともあり、懐かしさもあって練習しているスタジオへ遊びにいくことにした。

ボロアパートをフラフラな状態で這い出し、なんとかスタジオまでたどり着いた。すでにメンバーは練習を始めており、重たい防音扉をそっと開けた。

 

その瞬間、圧倒された。

 

パーカッションがリズミカルに鳴り響く中、ソウルフルな女性ボーカルが声を張り上げ、その歌声に絡むようにトランペットの音が鋭く突き刺さる。

SALSAの陽気な音楽が迎えてくれた。その時の精神状態からは、最も遠い所にある音楽だった。

数年ぶりに再会した友人に相槌を打ち、スタジオの片隅に縮こまって練習風景を眺めていた。演奏しているメンバー達は、どこか遠い世界の住人のように楽しそうに音楽を奏でている。

一息ついたとことで改めて挨拶を交わし、今後の展開を語ってくれた。
次のLIVEは音の厚みが欲しいので、トロンボーン吹いてくれないか?とのことだった。

聴いているだけでも十分楽しかったが、やはり実際に演奏するほうが遥かに楽しいことはわかっている。ただ、この頃は動くのもやっとの状態だったので、まともに吹ける自信はなかった。それでも、なんとかこの状況から抜け出したいという気持ちが残っていたのだろう。

気がつけば、メンバーたちの口車に乗せられて、次回から練習に参加することになっていた。

躁と鬱のはざまで

渡されたデモテープと譜面を自宅に持ち帰り、まずは譜読みから再開することにしたが、高校時代に演奏していたジャンルは吹奏楽やクラシックが中心で、SALSAの複雑なリズムは戸惑いの連続だった。
実際に吹いてみても微妙にリズムが取れない。それでも少しずつ練習していくにしたがって、なんとか音は出せるようになった。

次の練習日、楽器を携えスタジオに入り、ウォーミングアップ後に全員で曲合わせ。

 

自分だけ、ボロボロだった。

 

クラシックの世界だと演奏が止まり、四方から白目の集中攻撃を受けるところだが、そこはSALSA。陽気に明るく、ドンマイドンマイと励ましてくれ、音楽が止まることもなく皆が楽しく演奏している。

 

その瞬間を楽しむことをメンバーは教えてくれた。

 

そんなメンバーに助けられ、徐々に気持ちがアゲアゲになり、やがて少しずつリズムに乗れるようになってきた。

音楽仲間とは音で会話する。
なので、休憩中の会話も他愛のないことで盛り上がり、プライベートな部分に踏み込んでくるようなこともなかった。自分の今の精神状態を話すこともなく、その場で音を楽しむことに終始している。

 

なんだか救われた。

 

久しぶりに楽しい時間を過ごした。

それでも練習を終えて帰宅すると、その反動で疲れがドッと出た。
華やかな音の世界から四畳半の何もない部屋に戻ると、再び鬱々とした気持ちになってしまう。そんな気分から少しでも抜け出すため、部屋では譜読みに集中し、河川敷で思いっきり音を出した。

そんなこんなで、日々のスパイスを求め自宅とスタジオを行ったり来たりする日々を過ごしていると、鬱と躁を繰り返しているような状況になってくる。スタジオで曲合わせをする時は自分を抑える事ができずに、不自然なくらいハイになって、ともすれば攻撃的になってしまうこともあった。そんなときでもメンバーは温かく受け止めてくれ、決して責めるようなことはせず、今を楽しむことを教えてくれた。

当時は(も)無一文に近い状態だったので、スタジオに行く電車賃くらいしか財布になかったが、そんなことは気にするな、とばかり、練習後の居酒屋代などは心配しなくて済んだ。素寒貧の時はメンバーの仕事を手伝わせてくれ、給料を貰えたりもした。

 

泣けてくるくらい嬉しい心配りだったが、その優しさが辛かった。

 

練習後に自宅に戻り一人になると、ドット落ち込み自己嫌悪にさいなまれる。スタジオでのハイな状態とは裏腹に、自分を責め続ける日々が続いた。

 

なぜ、、、?

 

あの時、もっと、、、

 

過去の出来事が頭から離れることはなかった。

カンフル剤

そんな葛藤を抱えながらも、いよいよLIVE本番当日。
緊張と高揚感、そして自己嫌悪の入り混じった複雑な状態で会場入りし、セッティングも終わり、いよいよ開演。

リーダーの掛け声一発でそれまでの感情は吹き飛び、音の世界に没頭した。

圧倒的な音の世界に身を置き、ライブハウスの熱気に包まれ全身汗だくの状態で吹きまくった。

何も考えない。ただ感じるだけの時間が過ぎていった。

あっという間に時間が過ぎ、アンコールを終える頃には放心状態になっていた。

ライブを終え打ち上げではしゃぎまくって帰宅すると、そこは何もない四畳半部屋。再び現実に引き戻された。そんな生活を数年間続け、今の仕事をやるようになってから脱退することになった。
その後もバンドは毎年LIVEを行い、コロナ禍の数年間だけは行うことができず、今回のコロナ明けLIVEとなったようだ。

長寿の秘訣

2~3年で路線の違いから喧嘩別れして解散。

アマチュアバンドあるあるだ。そんな日本のアマチュアバンド界にあって、どちらかというとマイナーなジャンルのSALSAというダンス音楽を、30年以上の長きにわたり続けていられる秘訣はどこにあるのだろうか。

このバンドの特徴として、同じ高校の同窓が中核を構成しており、その時々の曲に合わせて、あるいはメンバーの増減に合わせLIVEの特色を出している。

SALSAの命、リズム隊の中核をなすパーカッションをリーダーが担当し、ピアノとベースを知性派の二人がクールに刻む。因みに、リーダーを見るたびにイタリアの指揮者リッカルド・ムーティ(誰?)を思い出してしまい、一人でウケていたのはここだけの話。やはり皆を統率するタイプはこの手の顔が多いようだ(こじつけ)。

メインの女性ボーカルがアレサ・フランクリンのような(誰?)迫力ある歌声で聴衆を魅了する。バンドではSALSAメインだが、それ以外の歌もジャンルを問わず、メチャクチャイイ!

自分は普段カラオケに行くことはないが、このメンバーで行くカラオケは別格で、本当に楽しかった。

その歌声に合わせトランペットが鋭く、サックスが甘く寄り添い華を添える。

以上のコアメンバーに加え、その時のLIVEに合わせてホーンセクションを中心としたメンバーが増強され、更に分厚い音を奏でることになる。

アマチュアバンドあるあるとして、高校の同窓のような集まりだと、コアメンバーだけで固まりがちで内向きになってしがいがちだ。その点、このバンドの良いところは、新たなメンバーがやってきても、すぐに溶け込める雰囲気を常に醸し出している。相手のそれまで演ってきた音楽ジャンルを否定することなく、うまく取り込もうとする。それだけ懐が広いということなのだろう。

新参者にとっても居心地が良いと感じさせる柔らかな雰囲気がある。

そういう自分もリクルート担当(トランペット)に誘われたのだが、このリクルーターが人たらしで、気がつけばノーとは言えない状況になっている。更にダメ押しでアレンジ担当(サックス)が畑違いの音楽にもすぐ馴染めるようにと、楽譜をサッと手渡してくれ、もっと読みやすくしてくれーなどとワガママを言ってもすぐに応えてくれる。

統率力のあるリーダーのもと、包容力に満ちたボーカル、冷静な状況判断のピアノとベース。そして人たらしのトランペット、的確なアレンジができるサックス。

アマチュアでこれだけバランスの取れたメンバーはなかなかいないのではないか?

それぞれの家庭環境や職業などは皆バラバラだが、音を楽しむというブレない軸のもと、お互いの個性を認めあい、長所を活かした開放的な雰囲気が、SALSAという、日本から最も遠い世界の音楽あっても長く続けていられる秘訣なのだと思う。

そんなバンドの今回のLIVEは、以下のプロが演奏する曲のコピーが中心となっているようだ。
底抜けに明るく楽しく、時に切ない曲が並んでいる。

いってみよー

コロナ禍で世の中がネガティブ方向へ傾き、ともすれば人の心もギスギスしてしまいがちな数年間が続いた。バンドもこの間LIVEはやらなかったようだが、今年はようやく収束に向かいつつある。
そんな、明るい兆しの見え始めた2023年。

ひと足早く夏を先取りしたい方。ぜひ、会場に足を向けてみてはいかがだろうか?

でも、私、踊ったりするの苦手なんです~

jinjin
jinjin

だいじょうぶですよ~♪

会場まで来る事ができれば、あとはリーダーの巧妙な口車にのせられて、気がつけばテーブルの下で楽しくステップ踏んでます。

仕事が煮詰まっててね~

jinjin
jinjin

どんと・うぉーり~~~♫

自分も普段のデスクワークは静かなBGMを流しているが、煮詰まった時はSALSAにチェンジ。途端に小難しい問題はどこかに飛んでいき、いつの間にか体を揺すって部屋をウロウロ。束の間リフレッシュして再び机に向かえば、あら不思議、煮詰まっていた仕事がスラスラと捗ったり。

コロナ禍明けの久しぶりのLIVE。

自分も是が否にでも行きたいところだが、残念ながらその日は北海道の僻地へ出張予定だ。届いたチケットが恨めしい。なので、このブログの読者を特別御招待!!!

受付で合言葉を言った方、先着2名様を入場無料にしちゃいます!!!

いいですよね?リーダー?

ハイ、僕は相変わらずズーズーしぃ奴です。

その合言葉は、、、

 

【センテナリアンへの道はここですか?】

これからも末永く活動を続け、センテナリアンに達した時、再びメンバーとして演奏させてくださいな。それまでの間、世界の片隅でヒッソリとブログを配信しながら応援しています。

 
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