北海道の僻地へ出張 -フェリーで船旅を満喫-

出張・旅

ゴールデンウィークは北海道の最西端で仕事をすることになった。

飛行機は往復共に満席に近い状態だったので、久しぶりにフェリーで北海道へ出張することにした。

北の大地への移動手段

まぁ、普通に考えれば飛行機だろう。
東京在住だと、羽田から北海道の主要空港へは2時間もあればたどり着く。なので、忙しいときは朝イチの飛行機で現地入りし、その日の最終便で羽田や次の目的地に行くようなスケジュールをこなすような事も結構ある。

二番目は陸路。最近は函館まで新幹線が開通したので、比較的時間があり車内でパソコン仕事をこなしたり、ノンビリ移動したいときは、5時間ほどの鉄道旅で北海道に上陸することも。

最後の手段は、フェリーで北海道上陸。
関東圏在住の場合は、茨城県の大洗港から北海道の苫小牧までフェリーが運行しており、船で北海道に上陸することも可能だ。日本海側からだと新潟-小樽間がフェリー運行している。意外と船で上陸するルートは今の時代でも存在するのだ。

北海道の主要都市が出張先ならば、飛行機利用で自宅から4時間もあればたどり着ける。サクッと移動して仕事をこなせば無事完了。

今回の出張先は北海道の最西端。

道南エリアの西のはずれなので、飛行機なら函館空港が最寄りの空港だが、そこから更に特急に乗り換え長万部まで鉄道を利用し、最後は各駅の路線バスに乗り換え、90分のバス移動で海沿いの街、ではなく町まで移動することになる。

トータル移動時間を測ってみると、

飛行機を利用しても:8時間

新幹線利用だと:9時間

自宅からの移動時間も含めた場合、空路でも陸路でも意外と時間は変わらない。それでも移動だけで8時間かかるわけで、ここまで時間がかかるのなら、いっそのこと海路で行くことにしたほうが旅気分を満喫できそうだ。

因みに、船で自宅から現地まで移動する場合のトータル時間は、

約26時間!!!

寅さん気分を満喫しよう!

新しくなったサンフラワー

十年以上前、苫小牧への出張時にはフェリーで北海道に上陸していた。
茨城県の大洗港から苫小牧港まで商船三井のサンフラワーが運行しており、夜に大洗港を出向し、翌日の昼過ぎに苫小牧港へ着岸するスケジュールで、19時間ほどの船旅だ。

当時のサンフラワーは昭和の頃から運行されている船で、長距離トラックのドライバーを対象とした作りになっており、船内は簡素な作りで、それなりに年季の入ったフェリーだった。
個室などは一部しかなく、夜は男女混合の大部屋で雑魚寝が基本。行商のおばちゃんたちや、バイクや自転車で北海道1週するような強者達と与太話を楽しむ空間だった。観光利用というより、どちらかというと通好みの移動手段だ。

そのサンフラワーが数年前にリニューアルされ、新しい船で運行されているようなので、久しぶりに今回の出張で利用してみることにした。

自宅から電車を乗り継ぎ大洗まで行き、そこから徒歩でフェリーターミナルに向かう。
ターミナルに近づくにつれ、船体に描かれたサンフラワーのシンボルマークが大きくなっていく。

総トン数:13,816トン
全長:199.7メートル
幅:27.2メートル
航行速力:24ノット(約時速40キロ)
旅客定員:590名
車両搭載数:大型トラック154台/乗用車146台

と記してもピンとこないが、

要するに想像以上にデカくて速いと言うことだ。

乗船手続きは予めWEB上で予約をしてあったので、あとは窓口で番号を伝えると、カード型のチケットを直ぐに発行してもらえた。

旧サンフラワーの時は、カウンターで紙の乗船名簿に手書きで個人情報を記していたので、時代を感じる。

乗船時刻になると、徒歩客はターミナルから100メートル以上ある乗船通路を進み船内に入る。巨大なハッチをくぐると右手には更に上方へ向かうためのエスカレーターがあり、登りきったところからが客室フロアの入口のようで、フロア階の表示は5階となっていた。

乗務員にカードキーをかざしバーコードを読み取ってもらう。

これで、乗船完了だ。

改めて案内板を確認すると、

船内は7階建ての巨大な作りになっており、1階から4階までがトラックやバイクの保管エリア。5階から7階までが客室エリアと分かれている。5階が大部屋や二階建てベットタイプのカプセルフロア。6階がレストランと一般個室。7階がバルコニー付きのプレミアム個室というレイアウトになっている。サウナ付きの大浴場やゲームコーナー、更にはドッグランまであるではないか!

巨大な動くホテルだ。

今回の部屋はもちろん大部屋。オジサンの一人旅は大部屋と決まっている(こじつけ)。船旅の醍醐味は大部屋でこそ味わえるのだ。今回も、大部屋ならではの楽しみを味わうことができた(後述)。

5階のインフォメーションカウンターの裏手が大部屋エリアとなっており、3つあるうちの真ん中の扉を開けると、こじんまりとした?大部屋になっている。照明の明かりは落ち着いた雰囲気で、日帰り入浴施設の仮眠室のような作りだった。

旧サンフラワーはこれより一回り以上広く、外を眺められる窓もあった。出入りのドアも二箇所あったりして、開放感あふれるただっ広い広間だった。そんな大部屋が客室の大半を占めていたので、時期によっては一人で貸し切りという時もあった。

寝床を整え部屋着に着替えたら、まずはひとっ風呂。
乗船後に船内を探検している観光客を横目にそそくさと大浴場へ。

旧サンフラワーの浴場は小さな湯船が一つしかなく、いかにも船員用といった作りで、サッと入りサッと出るタイプ。網走刑務所のお風呂ルールを思い出させる。

それに対し、新サンフラワーの浴室は洗い場が10箇所ほど、浴槽は5人ほど入れる湯船が2つあり、それぞれ大きな窓がついているので海を眺めながらゆっくりと浸かることができる。更にはサウナも付いているので、ガッツリと汗を流し潮風で整うこともできる。

とても綺麗で清潔感あふれるお風呂だ。

出航まで1時間ほどあるので、その間に大浴場で移動時の汗を流し、デッキで潮風をドライヤー代わりに髪を乾かしながら、離岸の雰囲気を楽しむ。
が、出港時には雲行きが怪しくなり、外海に出る頃には雨になってしまった。そうなってくると、甲板で夜の海を眺める楽しみななくなってしまう。

体が冷える前に船内へ戻り、晩ごはん。
レストランはバイキング形式で、営業時間になるとあっという間に行列ができる。バイキンは食べ飽きているので、予めフェリーターミナル側にある地元のストアで購入した惣菜で手軽に済ますことにした。

大部屋あるある

隣同士、マットを敷き詰めてゴロ寝が基本の大部屋だが、旧サンフラワーは隣と仕切るカーテンが無かった。新サンフラワーはカーテンが腰の位置くらいまで引けるので、横を向いた時に他人の顔と鉢合わせすることがなくなった。

これだけでも上出来なのだが、音問題だけはどうしようもない。

夕食をラウンジで食べ終えてから部屋に戻ると、向かい側の寝床に先客が寝ていた。枕元には焼酎のペットボトルが置かれており、既に泥酔高イビキ。

この日の室内は5名程しかいないのに、何故か近くに固まって枕を並べている。
乗船時の窓口でチケットを受け取る際に席も指定されるのだが、これだけ少ない乗客しかいないのなら、もっと離して配置してくれても良さそうなものなのに、窓口のスタッフはそこまで気が利かないようだ。

消灯時間を過ぎた頃になると、更に大きなイビキが室内に響き渡る。酔っ払い特有の雷のようなイビキのせいで、他の客はなかなか寝付けないようだ。時折起き上がってあたりを見回すと、他の客たちと視線が合い、苦笑いをしながら首を振り諦めモード。当の本人は意味不明の寝言も交えながら更に雷鳴を轟かせ気持ちよく泥酔している。

幼い頃、母親が入院するたびに預けられていた親戚の家族がイビキ持ちで、眠れぬ夜を過ごしていた。
なので、側でイビキの音がすると、未だに気になってしまい眠ることができない。結局、一番入口付近に寝具を移動し、できるだけ距離を取ることにした。耳栓をするとようやく遠雷程度まで音が小さくなり、なんとか眠ることができた。

予約時のWEB画面にいびき項目を設けてもらい、自己申告で他の乗客より遠い場所に席を指定するような仕組みを切に願うところだ。
ちなみに、大部屋はあと二箇所くらいあり、カップルや家族連れの場合はそちらを指定されるようだ。

雨の苫小牧港

朝になると雨は更に強くなっていた。


甲板にでても雨に打たれるだけなので、ロビーのソファーに腰を下ろし読書三昧で時間をつぶす。
陸地から近いとは言え、海の上なのでスマホの電波は繋がらないと思ったほうが無難。時折繋がることもあるが、せっかくの船旅なので電波のない楽しみを模索しよう。

下船時も雨がやむことはなく、苫小牧駅までのウォーキングは諦めバス移動。そこから特急に乗り換え長万部まで行き、更にローカル路線バスに乗り換え出張先の町へと移動。自宅を昼過ぎに出て、宿に着いたのが翌日の夕方。

トータル30時間をかけて、ようやく仕事先の旅館にたどり着いた。

やはり、船移動は遠いところまで旅をしたな~、という感覚をタップリ味わえる。

往路は終日雨となったため、甲板で潮風を浴びながら景色を楽しむことはできなかったが、新サンフラワーは船内がとても綺麗でゆったりと寛ぐことができた。

帰りの航路は晴れるだろうか。

帰路、名物の港飯を食いそこねた。

ゴールデンウィーク中は僻地の町で仕事をこなし、合間をみて出張RUNやウォーキングを楽しんだ。チェックアウトの日は快晴。快適な船旅を楽しめそうだ。

往路の道を逆にたどり、路線バスと特急を乗り継いで苫小牧駅には昼過ぎに着いた。
特急内で駅弁を食べることはせず、遅めの昼ごはんを漁港の漁師飯で腹を満たそうと予定していたが、以前行ったことのある漁港の飯屋が近年大人気となり、1時間の行列は当たり前になってしまったようだ。更に営業時間が早朝からお昼までなので、着いた頃には閉まっていた。名物のホッキカレーはまたの機会だ。漁獲量日本一のホッキ貝がタップリと入ったホッキカレーは激ウマで、一度食べたら忘れられない味だった。

さて、どうしたものかと歩きながら思案していたら、アーリオ・オーリオのいい匂いが鼻腔をくすぐった。

道路沿いにイタ飯屋を発見。

今回の宿では朝昼晩、和食の魚料理だけだったので、空腹時のニンニクとガーリックの匂いは無敵の凶器だ。迷うことなく店の扉を開けた。
ランチタイムの時間は過ぎていたので、客はおらずキッチン越しのカウンターに陣取る。

オーナーシェフは日本語の分からないイタリア人のようで、奥さんが都度通訳してくれながら楽しく会話を楽しめた。シェフの名前がマイケルということだったので、ゴッドファーザー話で大いに盛り上がった。
出てくる料理は純粋なイタリアンの味。シェフのポリシーとして、日本風にアレンジした味付けではなく、子供の頃から食べていたマンマの味を再現しているとのこと。トマトソースのパスタも味付けは塩とオリーブオイルとガーリック、トマトだけ。

なのに、とびきり美味い!

前菜はもちろん、追加で頼んだドルチェも間違いない味だった。苫小牧に来た時の楽しみが一つ増えた。

最高の航海日和

夏を思わせる日差しの中、店を後にして食後のウォーキングを楽しみながらフェリーターミナルまでのんびり散歩。

東京では散ってしまった桜も、ここではちょうど満開となっていた。

出向の2時間ほど前に窓口に着いたが、既に長蛇の列だった。
復路も大部屋で帰ろうと思ったが、季節はゴールデンウィーク真只中。個室や大部屋は既に満席となっており、二段ベッド形式のカプセルルームだけが何部屋か空いている状況だった。

乗船開始時刻となり、客室へ入ると、二段ベッド形式の寝床が奥まで続いていた。

部屋着に着替え寝転がってみると、意外と快適な空間だ。カーテンを占めると繭のなかにいるようで、妙に落ち着く。
が、ここで眠ってしまっては出港時のマジックアワーを楽しめない。いそいそと手ぬぐい片手にウォーキングでかいた汗を流しに大浴場へ。

風呂上がり、甲板に出てみると、ちょうどマジックアワーの始まりだった。
心地よい潮風で髪を乾かしながら、恵庭岳あたりに夕日が沈んでいくさまを船が外洋に出るまで眺めていた。

遅めのランチをタップリ堪能したのでお腹が空かない。夜は抜いてプチ断食でお腹を休めよう。


太陽が沈む頃、外洋に出た。
見上げると満点の星空。試しに月を撮影してみたが、船が揺れてるのでブレブレ。さすがに洋上の船で星空を撮影するのは至難の技を要求されるようだ。

程よく夜風で体が冷えた頃、船内に戻って繭に潜り込む。
居心地の良い繭の中で本を読んでいたら、いつの間にか寝落ちしていた。

翌朝、ガーミンに起こされるまで爆睡していた。二段ベッドのカプセルルームは予想以上に静かで快適だった。他の乗客のもの音は殆ど聞こえない。心地いい船の揺れが、まるで揺りかごのようだった。

甲板に出てみると雲ひとつない快晴。
早起きして日の出を見ようと思ったが、既に高い位置に昇っている。
これだけの快晴なので、雄大な日の出が拝めるところだったのに、もったいないことをした。それでも前後不覚になるくらい爆睡できたので良としよう。

起床後は、ほとんど甲板で過ごしていた。快晴の船旅ほど、穏やかな気分で過ごせる移動手段は他にはない。

潮風に吹かれながら遥か彼方の水平線をぼんやりと眺めているだけで、頭の中が空っぽになり、甲板に寝転がり空を見上げているだけで、まるで浮遊しているような心地よい眠気に誘われる。

視線を右に向けると東日本の青森、仙台、福島の原発施設と、大震災あたりの被災地エリアが目に飛び込んでくる。


まだまだ大きな爪痕が残っている地域だが、海の上から眺めている限りでは、何事もなかったかのように海鳥が優雅な弧を描いている。
当時のいろいろな出来事を思い浮かべながらぼんやりと大海原を眺めていると、やがて大洗のフェリーターミナルにあるシンボルタワーが現れる。


防波堤を過ぎると、それまで黒潮の深い蒼色だった海の色が深緑色の海の色が変わり、波も一気に穏やかになった。

長かった船旅もいよいよ下船が近づいてきた。

ターミナルの横は海水浴場になっているようで、夏日の日差しのもと、海水浴客が大勢砂浜に出ているのが見えてくる。ここまでくると岸壁はすぐそこ。隣には深夜便のサンフラワーが接岸していた。

名残惜しむかのようにゆっくりと着岸し、係留ロープがかけられる頃、ようやく部屋に戻り荷物をまとめて下船した。

真夏のような暑さの中、大洗駅まで観光客で渋滞している車を横目に最後のウォーキング。
電車に乗るとエアコンの人工的な風が車内に充満していた。先程までの潮風とは異質の涼しさの中、長旅の最後の移動を終える頃にはすっかり体が冷えてしまっていた。

今回の出張は往路、復路とも船で移動するという贅沢な時間を過ごすことができた。新しいサンフラワーは晴れていれば最高の船旅を満喫できるし、天候が悪くて甲板に出られなくても、船内でゆったりと過ごせる工夫が随所にされており、あっという間に時間が過ぎた。

思い返せば、日本のコロナ禍は客船から始まった。

当時はテレビ越しに船内に缶詰の乗客たちを案じていたが、それから3年間、皆が疑心暗鬼になりストレスを溜め込んだ生活を余儀なくされ、コロナ禍の終息宣言が出される頃に船旅で心の洗濯ができたことを思うと、感慨深いものがある。

普段はせわしなく飛行機で飛び回っているが、時折、心の洗濯がしたくなったら船旅は是非おすすめの移動手段だ。

また、機会があれば船旅をチョイスするとしよう。

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