ホテル暮らし part6 -満期-

carillon コロナ関連

三月末日、二ヶ月間に及ぶホテル暮らしがようやく終わった。
仕事も無事に終え、最後の晩は同僚と焼鳥屋で祝杯を上げた。

不便を楽しむ。

同僚は最後の一週間だけ現地入りし、同じホテルに泊まることになったが、既に音を上げていた。
二ヶ月なんて僕には絶対無理!と断言していたが、日中は仕事で外出しているので部屋に缶詰というわけではないし、日々の献立を考えながら自炊をしていると、あっという間に一日が終わる。

ホテル暮らしの最中、【ショーンシャンクの空に】という大好きな映画を久しぶりにアマゾンprimeで観た。
どんな状況、環境にあっても、それまでの日常に拘るのではなく、そこで出来ることに楽しみを見出すことで、意外と乗り越えられるものだ。

コロナ禍で自粛が求められる昨今、今までの日常を過ごすことができずストレスを溜め込んでしまっている人が多いが、人と交わらず部屋に閉じこもるのが一番の対策なので、今回のホテル暮らしはいいトレーニングになった。

おかげさまで、無事、コロナに感染することもなく健康体で乗り切ることができた。また規則正しいリズムで生活し適度に運動を続けたことで、ストレスを溜め込むことも無く、すこぶる調子よく過ごすことができた。
因みに、この二か月でズボンのベルトの穴が一つ狭まった。

最後の朝

チェックアウトの日は真夜中に起床し、それなりに溜まった荷造りを終えると外が白んできた。
前日まで曇り空が続き、花粉と黄砂と霧で真っ白だったが、今日は晴れそうな予感。
最後に近くの里山まで軽めのジョギングをすることにした。
前回来たときは雪に埋もれていた山道も今ではすっかり溶け、所々新芽が芽吹いている。

頂上に着くと朝日が顔を出し、久しぶりの青空が一層輝きを増す。

ほんの一月ほど前は巨大な雲かと見間違うような分厚い雪に覆われていた月山も、今では薄っすらと陰影を表すようになり、朝日に照らされてほんのりとピンク色に染まっていた。
眼下広がる市街地を見下ろし、お世話になった二か月間の滞在に別れを告げる。

最後の朝食

部屋に戻り最後の晩餐ならぬ、最後の朝食をいただく。

今回の宿で助かったのは、朝食をホテルの食堂ではなく部屋で食べられるということだ。
バイキングの代わりに弁当形式で提供され、おかずは毎日変わる。そこにアツアツの味噌汁とヨーグルトが付いてくるので、単調な日々にあってささやかな楽しみだった。

十分な量の弁当なので、昨日まではご飯は残し夜用に取っておいたが、移動日の朝はしっかりと食事をとるようにしている。長年の経験から、移動中に何が起こるかわからないからだ。

というわけで完食した。

食後の珈琲をゆっくりと飲み、窓辺のパキラをこれからの長旅に備え空き缶にそっと入れ、最後の荷造りを終えた。

窓から眺めていた月山に最後の別れを告げ、部屋を後にした。

ローカル駅の春

フロントで分厚い束の領収書を貰いホテルを後にすると、雲一つない青空が広がっていた。
目の前の交差点を渡ったらあっという間に駅に着くが、二ヶ月間のホテル暮らしを思い出しながら、ゆっくりと歩く。

駅の土産コーナー(というより売店)でお勧めの土産物を見繕ってもらい、新幹線の出発時刻まで売店のおばちゃんと世間話で時間をつぶす。
このエリアは日本一のサクランボの産地らしく、今は新芽が芽吹き始めているだけだが、シーズン中は見事な花と実を着けるということだ。最盛期は5月から6月辺りらしいが、その頃は誰でもその場で採って食べることができるそうだ。

タイミングは合わなかったが、真冬の雪景色から春の雪解けの景色を堪能できたので、サクランボはお土産で楽しむとしよう。

帰りの新幹線

久しぶりに乗る新幹線。

ここ数日、お隣の宮城県ではクラスターが発生し連日感染者が増大していたが、山形もその影響で感染者がどんどん増えてきているらしい。
その影響か、新幹線も来るとき同様貸し切り状態で、密を避けることができた。

車窓から東北の春を眺めながら最後の報告書をまとめた後は、いつの間にか爆睡してしまったようだ。
最近は車内で寝ることがなくなったが、やはり疲れがたまっていたのだろうか。気が付くと窓の外は雑多な街並みに変わっており、いつの間にか大宮を過ぎていた。

上野駅で在来線に乗り換えると、一気に人混みに飲み込まれてしまった。
これではコロナ第四波は免れまい。

急ぎ足で地元の駅を降り、2か月ぶりの玄関チャイムを鳴らすと、懐かしい笑顔が出迎えてくれた。

2か月に及ぶホテル暮らし中心の出張は、こうして無事に終えることができた。

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