鳥海山登山の翌日、鳥の囀りとともに目覚めたが、空はあいにくの雨模様だ。それでも雨に濡れる新緑は若々しい生命力に満ちている。
天気予報では昼前から晴れるとのことだったので、ゆっくりと身支度を整えチエックアウトし、土曜日に下見しておいた三崎公園キャンプ場に向かった。
海沿いの絶景キャンプ場
麓まで降りると雨は止み薄日がさしてきた。
鳥海グリーンラインの5合目から目的地のキャンプ場までは、象潟側から降りても吹浦側から降りても30分程度で到着する。
7号線沿いの三崎公園入口は見落としがちな場所に表示されているが、三崎全体が公園になっているようだ。その一番奥、海側に面した場所がキャンプ場になっている。
昼前にキャンプ場に着くと誰もいなかった。管理棟を訪れたが管理人もいない。受付の鍵は開いていたので敷地内で野良仕事でもしているのだろうか。とりあえず受付用紙に必要事項を記入していると管理人が戻ってきた。
チェックインまだ早そうですが、大丈夫ですか~?
今日は多分貸切だろうから全然いいよ~
気の良さそうなお兄ちゃん?orオジサン?(見た目年齢不詳)が気さくに対応してくれ、好きな場所に張っていいとのこと。
一泊¥300なので二泊分で¥600だな~
ロッピャクエン?!
安すぎる!!!
このロケーションで一泊\300は破格の値段だ。関東圏だと考えられない。
まだ誰もいないキャンプ場をウロウロと物色し、水場のあるサイトの一番奥に居を構えた。
日が差してきたのでタープも設営し、今夜の寝床完成。
下山後は無性に肉が食いたくなる。
登山直後は無性に蕎麦が食べたくなるが、その後は必ず体が肉を欲する。その欲求に素直に従おう。
一通りの準備を終えた後は晩御飯の買い出しへ。
キャンプ場から北に向かおうと南に向かおうと15分くらいでスーパーやホームセンターがあるので、予め食料を買い込んで置く必要はない。
キャンプ場の真下にある浜には流木が大量に流れ着いているので薪の心配はしなくて良さそうだが、スーパーの隣にあるホームセンターで薪が安く売っていたのでついでに購入。
野菜サラダ
グラフェットビーフのステーキ
松茸のお吸い物
コムタンクッパ(名前にはクッパと表示されているが、ご飯は入っていない)
オートミール
ソロキャンプのときはメニューに凝らない。簡単に作れて美味ければそれで良し。
夕陽の名所ということらしいので、その時が来る前に夕食を済ませておこう。
チャチャッと火を起こし熾火になったところで肉を投入。味付けは塩胡椒のみ。
煮炊き用のウッドストーブでコムタンスープを温め、オートミールを追加。
火が通るまでサラダとお吸い物で間を持たせる。
肉のいい匂いが立ち込める頃、コムタンオートミールも出来上がった。
野外で食すステーキは何でこんなに美味いんだろう?
特別な味付けはしていなくとも牧草牛の旨味を十分に楽しめた。
数切れをダイレクトに味わい、残りはコムタンオートミールに投入。今回、初めてオートミールをキャンプ飯に試してみたが、手間もかからず予想以上に美味かった。
米食にこだわるキャンパーも多いが、そのままでも食べられるオートミールは登山やソロキャンプの主食として十分アリだ。
まさかの誤算
滅茶苦茶美味かったコムタンオートミールステーキ飯を堪能した後は、いよいよマジックアワーを楽しむ時が来た。
食後の珈琲を淹れその時を待っていたが、なんかちがう。
目の前に夕陽が現れず雲に隠れているのかと思ったが、沈むであろう方角が違うようだ。
辺りを確認すると、設営した場所からは岬の突堤にある丘が邪魔して見えない!
丘に沈む夕陽をぼんやり眺めるだけになってしまった。
まぁ、こういうこともあるさ!
と叫んでみても辺りは誰もいない貸切状態のキャンプ場。
その後は焚き火を楽しみスゴスゴと寝床に入っていった、、、
叫び声に叩き起こされた。
翌朝、フライシートがぼんやりと明るく映る頃、野鳥の囀り、ではなく、カラスの絶叫に叩き起こされた。
カァカァ
ではなく
ギャァァァ~!!!
グウェッ グウェッ!!!
ギャァッァァァーーーーーー!!!
グゥゥグゥゥ!!!
恐竜の叫び声(しかも一羽ではなく何羽もの親鳥と雛の鳴き声)だ。
外に出てみると、昨日は気づかなかったがテント側の樹の上にカラスの群れが巣を作っているようで、そこを拠点に大合唱している。
どうやらキャンプ場の残飯に味をしめ居着いてしまったようだ。
以前、四国の山中でキャンプ中に狸に登山靴を盗まれたことがあったが、野生の動物がキャンプ場に現れるのは残飯目当てだ。
キャンパーのマナーが悪いと一気に獣害が発生してしまう。
その点、北海道はキャンパー達のマナーが行き届いている。
残飯などは決して放置しないし、食料も匂いが漏れないようジップロックなどにキッチリとしまい、テントから離れた丈夫な収集箱のような場所に保管しているのだ。
こうしておかないとヒグマに襲われる可能性があるからだ。
本州でも最近のキャンプブームでツキノワグマの被害が出るようになってきた。
登山やキャンプのマナーとして、食料の管理は徹底しよう!
ソロキャンの時にシンプルな食事を心がけているのは、獣害にあいたくないということもある。
漁師さんから晩御飯のおすそわけ
そんなこんなで早く起きすぎた二日目の朝。朝食を済ませ海をぼんやり眺めていた。
眼の前の湾では漁師さんが船に何かを引き上げている。
何が採れるのか気になっていると、突然、目の前の手すりの向こうから漁師さんが崖をよじ登ってきた。
大きな袋をドサッと下ろし柵を超えてきたので、好奇心から尋ねてみた。
何が採れるんですか~?
ワガメ-ーー!
、、、食うか?
アザーーーッス!
キャンプ場の端に止めてあった軽トラに袋を放り投げ、中から大量のワカメを見せてくれた。
シャブシャブにして食うとうめーぞー
こごのメガブあだりが最高だ!
いやいや、一人なんでそんなに食べれないです~!
軽く一掴みしただけでも十分すぎる量だ。
有り難く頂戴し、しばらく世間話。
このエリアは禁漁区で、素人はワカメであっても採ることは許されず、地元の漁師であっても色々な権利があって、自分は海藻類しか採ることができないとのこと。云々。
少し悔しさの混じった地元話を終え、オジサンはキャンプ場を後に去っていった。
地元の漁師さんでも色々なしがらみがあるのだな~と思いを巡らせつつ、今夜の晩御飯が決まった。
ルームチェンジ
昨日のガッカリを挽回すべく、二日目は敷地内のカラスがおらず、夕陽を堪能できるであろう絶景ポイントにテントを移すことにした。
管理棟の奥にあり洗い場からは遠いが、今日も貸し切りの雰囲気だったので一番いい場所に移ることができた。
うん、ここなら間違いない(だろう)
朝から晴天だったので早めにタープを張り、午前中は散策タイム。
水辺や展望台から望む鳥海山の稜線が美しく青空に映える。
その後、晩御飯の買い出しがてら海沿いを気持ち良くドライブ。
絶品の海の幸&夕日を堪能
念のため夕日の方位をWEBで確認し、ここなら間違いなさそうなので晩御飯の支度を始める。
銀カレイの焼き物
初日に道の駅で食べた銀カレイがあまりにも美味かったのでテイクアウト
ワカメのシャブシャブ
塩昆布と松茸のお吸い物で出汁を取り、ガンモが安かったので投入。
銀カレイをほぐしながら熱々のガンモを頬張る。
頃合いを見計らいワカメ投入。
数秒シャブシャブするだけで鮮やかな緑色に変身!
ポン酢に着けて口に含むと肉厚の歯ざわりとシャキシャキッとした食感が最高!
新鮮なワカメシャブシャブは紛れもなくメインディッシュになる!
〆にオートミールを投入し、雑炊にしようと思ったが、ワカメだけでも腹がはち切れそうになった。
明日の朝が楽しみだ。
パンパンになった腹を擦り夕食を終える頃、辺りにマジックアワーの気配が漂ってきた。ここから先は言葉はいらない。
崖から拭き上げてくる潮風は冷たかったが焚き火の炎が優しく温めてくれる。
夕陽が沈んだ後も、静かな波音をBGMに夜更けまで海を眺めていた、、、
猪木の雄叫びとともに
最終日の朝は波の音で目が覚めた。時折、野鳥のさえずりも聴こえてくる。
海辺のキャンプ本来の朝だ。
晴れ渡った青空の下、彼方の水平線を眺めながら朝の珈琲を飲んでいると、強烈に催してきた。
急いでトイレに走り
イチィ:閉める
ニィ:おろす
サンッ:しゃがむ
ダーーーーーーーーーーーー!!!!!
猪木のリズムと共に、予想を遥かに上回る量の大が便器を埋め尽くした。
ワカメシャブシャブ 恐るべきパワーだ!
それ以上に嬉しかったのは、
今までは和式トイレにしゃがむと股関節に痛みが走るため、じっくりしゃがむことが出来ず中腰にならざるを得なかったが、今回は深くしゃがんでも痛みが全く出なかった。
今年からゆるRUNに切り替え、同時に股関節周りのストレッチも走る前後に入念に行うようになった成果だろうか、完全にしゃがんでも全く痛くない。
二重の喜びに顔をほころばせ、爽やかにトイレを後にした。
立つ鳥跡を濁さず
その後はテキパキと撤収の準備をし、設営時以上に周りを掃除した。
これだけ素晴らしいキャンプ場なので、いつまでもきれいな場所であってほしいものだ。
チェックアウト後は焚き火臭を落とすべく、近くの日帰り温泉施設で朝風呂を楽しむ。
思わず笑ってしまう名前からは想像がつかないくらい露天も内風呂も素晴らしい泉質だ。
いつまでも浸かっていたかったが、レンタカーの返却時間も迫っていたので早めに切り上げた。
さっぱりとした服に着替えた後は鶴岡駅まで最後のドライブを楽しみ、4泊5日の東北休暇を満喫した。
車窓から眺める鳥海山の優美な姿がいつまでも焼き付いていた。
三崎公園キャンプ場データ
今日の一品
ソロキャンプや星空鑑賞など、ゆったり座りたい時のキャンプ椅子ならこれに勝るものは無し。
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