3月は群馬県渋川市を行ったり来たりの日々だった。
今年は例年よりかなり早く桜が満開となったので、年度末まで仕事に集中し、最終日にお花見登山でリフレッシュ。
東か西か
今回の出張は渋川駅前のホテルに宿泊していた。駅近辺は桜が満開で、青空とのコントラストが美しい。
東向きの部屋の窓からは赤城山が間近に見え、西向きの1階食堂からは榛名山が直ぐ側に頂きをのぞかせている。
どちらの山も駅前から1時間足らずで登山口までたどり着け、湖畔を取り囲むようにピークが連なっているが、高低差はさほどないのでお手軽に登れる。元気な人は午前と午後の一日で両方を登ることも可能だ。
両方登るのはせわしないのでプラン外。
赤城山は残雪で道がグチャグチャな予感。
榛名山は途中、伊香保温泉街を通っていく。
ということで、登山と温泉という鉄板の組み合わせで榛名山に決定。
金曜までが仕事なので、土曜日に登るとなると桜が満開なこの時期は観光客で大混雑が予想される。できるだけ人混みは避けたいので、金曜の夜からレンタカーを借り榛名湖畔で車中泊、混みだす前の早朝から登山、その後、温泉に入り帰路につくというプランにしてみた。
久しぶりの車中泊
出張先での移動手段は、事故が怖いので可能な限り公共交通機関を使っているが、登山道付近にバス停がない場合や早朝、深夜でバスが運行していない場合はレンタカーを使うことになる。ただ、場所によってはレンタカー屋さんがない場合もあったりする。そういうときはカーシェアを利用する機会が増えてきた。
24時間出し入れ可能で直前まで予約の変更の可能。以前はターミナル駅付近にしか無かったが、最近は住宅街のコインパーキングの一角にカーシェア専用のスポットがあったりして、利便性が大幅に向上した。
スマホで15分単位の予約が可能で、更に利用開始時や返却時の解除、ロックもスマホアプリで可能だ。
レンタカーとカーシェアの両方を扱っていて、全国展開しているタイムズさんを最近利用する機会が増えた。
今回も駅から五分ほどのところにカーシェアスポットが有り、外装周りを確認したらスマホで鍵のロックを解除し、車内に乗り込みスタート。レンタカーに比べ手続きがあっという間に終わる。
登山前夜
登山前は炭水化物多めでエネルギー補給することにしている。このエリアはうどんの産地ということで水沼うどんを晩御飯にチョイス。
野菜たっぷりの下には水沼うどんが隠れている。讃岐や九州、稲庭とも違う食感で美味かった。
腹を満たしたあとは伊香保温泉街の日帰り温泉で仕事の汗を流す。
渋川駅近辺は汗ばむくらいの気温だったが、車を出ると肌寒かった。昭和の風情が色濃く残る温泉街は夜景も綺麗だったが、標高700m付近の温泉街は桜もまだ五分咲き程度だった。湯冷めが気になったので夜の温泉街散策はせず、湯冷めする前に車に戻り榛名湖畔の駐車場へ向かう。
この時期、真夜中の湖畔駐車場は貸切状態だった。暖房の効いた車内のドアを開けると、冷気が一気に流れ込んでくる。榛名湖畔は標高1,000mほど、温度計はあっという間に氷点下に近づいてくる。駐車場の街灯に照らされた木々も寒々しく、駅前の桜は満開だったが湖畔沿いはまだまだ先のようだ。
エンジンを切り寝袋にくるまっていると、徐々に頬の周りが寒さで強張ってくる。外気温は氷点下になっていた。物音一つ無い湖畔の夜は窓から差し込む月明かりさえも冴え冴えとしている。脳内で、♪静かな湖畔の森の影から~♪を唄っていたら、いつの間にか夢の中へと入っていった。
本日も晴天なり。
東の空が白み始める頃、車のエンジン音で目が覚めた。登山客がポチポチと到着したようだ。車内なのに吐く息が白い。天国のような寝袋の温もりに抗うことはできず、あと少しだけ、少しだけ、もう少し、、、ウトウトと寝ぼけ眼で過ごすことにした。
完全に夜が明け、湖畔沿いの道に車の音が響き渡るのを合図に寝袋から脱皮する。
外は雲ひとつない晴天だ。
初っ端に登る榛名富士も青空のもと、クッキリと姿を見せる。
絶好の登山日和。野鳥たちのさえずりを聞きながら身支度を整え車外に出ると、登山客が続々と登山口へ向け歩いていく。
湖畔沿いの山々は高低差400m程、登山というよりはハイキングといったレベルだが、早朝の登山客は皆キチンとした装備で登山口へ向かっている。
今回は湖畔沿いに連なるピークを縦走予定で、5時間もあれば余裕で一周できる行程だ。完全装備ではなく、トレランシューズにタイツ、トレラン用のザックに珈琲セットと軽食を積め、トレイルランニングの格好で登ることにした。
まずは軽やかな足取りで登山口から榛名富士頂上を目指す。
木々に囲まれているので景色を楽しむことはできない。それでも、早朝ならではの美味しい空気と、野鳥たちの歌を聴きながら登山道を歩いていると、なんとも言えない幸せな気分になってくる。
低山の魅力の一つだ。
木々の合間から榛名湖が見えてくると、頂上はすぐそこ。ロープウェイの建物が現れ、その先の階段を進むと、あっという間に榛名富士の頂上に着いた。
この時期特有の霞んだ空からの眺めはイマイチだったが天候には恵まれたので良しとしよう。
野鳥達の歌を楽しみながら、お社に奉納された絵馬の願い事などに思いを馳せていると、続々と登山客が登って来ては足早に去っていく。
異質な音
暫く佇んだあと、次のピークへ向け一旦降りることにした。
再び木々に囲まれ静かな登山道を歩いていると、突然、湖畔から大音響が響き渡った。
○X党の △□でございます~~~!
湖畔沿いの周回道路を選挙カーが走り回っているようだ。
あまりの異質な大音響にビックリして、思わずコケた。熊笹に隠れていた木の根に足を滑らせ尻餅をつくという、樹林帯トラップに引っかかってしまい、暫くの間、痛みに耐えていた。
楽しげにさえずっていた野鳥たちも歌うのをやめ身を潜めている。
沈黙の春になってしまった。
休日の早朝、しかも静かな湖畔の観光地におよそ相応しくない、場違いな街宣車の大音響がいつまでも鳴り響いている。
痛みが収まるに反比例し、猛烈な怒りがこみ上げてきた。
今どき、こんな場所で街宣車から大音量を撒き散らし、無神経な自己アピールするような立候補者がいることに驚いた。TPOの気配りできない人間にまともな政治などできるわけがない。もし、自分が地元の人間だったら、コイツには絶対投票しないと思う。
なんだか一気に興ざめしてしまった。
観光地の低山なので人口音が聴こえてくるのは仕方ないが、余りにも無神経な騒音のため、この先のピークへ向け縦走する気が失せた。
足元は雪ではなく、雹の粒が積もっている。コケるのはもう勘弁なので慎重に歩みを進める。
湖畔まで降りてきたら騒音はようやく去って行ったが、すっかりしらけてしまった。
縦走の予定を変更し、次のピークへの分岐点から湖畔沿いをジョギングすることにした。
絶景ポイント
駐車場から対岸あたりまで来ると、掃部ヶ岳の登山口に差し掛かる。
榛名湖畔の最高峰で1,449m。湖畔からの高低差は400m程度。サクッと登っても良かったが、途中に硯岩という絶景ポイントが有るようなので、まずはこちらに向かうことにした。
熊笹の生い茂った足元に注意しながら進むと、あっという間に硯岩へ到着。
硯岩の標高は1,251m。100mほどの切り立った岩が山肌から垂直にそそり立っている。足元は断崖絶壁。落ちたら間違いなく天国に行けるだろう。
その分、絶景の景色が広がっている。
最高の天気に恵まれ美味い珈琲を堪能していると、怒りもようやく収まり心が晴れてきた。この先、掃部ヶ岳に登り更なる絶景を楽しむこともできたが、十分に満たされてしまった。
1時間以上も貸切状態で絶景を楽しめたので、駐車場に戻ることにした。
昼前に一周5キロほどの榛名湖畔のジョギングを終え駐車場に戻ってくると、駐車場は満車となっており、観光客でごった返していた。
広い敷地では乗馬もできるようで、おとなしい牝馬がお客さんを乗せゆっくりと散歩している。
カメラを向けるとポーズを取ってくれる。ツーショットも嫌がることなく応じてくれた。さすが観光地のお馬さんだ。
駐車場への空き待ちの車が列をなし始めたので、汗を流しに伊香保温泉への帰路に着く。
寛げる露天風呂
20分ほど車を進めると伊香保温泉街に戻ってくる。
温泉街の中心地は駐車場も満車状態でごった返しているので、少し離れた最上流にある日帰り露天風呂に向かうことにした。
橋の側にある駐車場に車を止め橋をわたり、五分ほど渓流沿いを歩くと日帰り専用の露天風呂にたどり着く。ちょうどお昼時というタイミングだったので、先客と入れ替わり、ほぼ貸切状態だった。
男女は分けられているが、脱衣所の横にぬるめと熱めに仕切られた露天風呂があるだけ。洗い場はない。もちろん石鹸やシャンプー、ドライヤーといったアメニティーも無い。単純に湯に浸かる。ただそれだけで良いのだ。
ぬるめも熱めも丁度よい湯加減で、好みのタイプの温泉だ。
傍を流れる渓流の音をBGMに、のぼせ始めたら湯船からでてストレッチ、そして再び湯船に浸かるという動作を何度も繰り返し、出張疲れと登山の汗を流す。
自然と一体となり、静かな時間が過ぎて行く。
まだまだ浸かっていたかったが、お昼時が過ぎ再びお客さんがゾロゾロと入りだしたので、素早く着替えを済ませ露天風呂をあとにした。
絶品のお蕎麦屋さん
温泉を出た時点でお昼時を大幅に過ぎていたので腹の虫が騒いでいる。
下山後には蕎麦を食べるのが定番のコースだ。温泉街から少し離れた住宅街に隠れ家のようなお蕎麦屋さんを発見。
田舎蕎麦、ヨモギ蕎麦、更科蕎麦の三色蕎麦に天ぷらを付けた。それぞれの特徴がよく出ており、天ぷらの揚げ具合も良く、美味かった!
居心地の良い露天でさっぱりと汗を流し、美味い蕎麦でたっぷりとお腹を満たし、心地よい春の風に吹かれながら車を走らせ帰路についた。車を返却した駐車場近くの桜はハラハラと花びらが散り始めていた。その下をのんびりと歩きながら駅に向かい、到着した電車に乗り込んだ。
年度末の渋川出張、以上で無事終了。物足りない登山となったが、コロナ明けの新年度に向けリフレッシュ完了。
ガーミンの精度
今回もガーミンウォッチでログを取ってみたが、途中GPSが圏外の状況になっていた。
登りはじめの樹林帯から頂上に出るまでの間と、頂上から再び樹林帯に入り湖畔に出るまでの間が飛んでいる。どうやら樹林帯は苦手のようだ。森林限界を超えたような高山ではGPSを受信できるようだが、それまでの樹林帯で圏外になるようでは使い物にならない。ガーミンの245は平地で開けた場所でのランニング専用という位置づけのようだ。上位機種だと樹林帯でも正確にログを採れるのだろうか?
因みに、同時に記録を録っていたスマホアプリのYAMAPは樹林帯でも正確にログが取れていた。今後は使い分けることにしよう。
やはり山では紙の地図を基本とし、スマホアプリを記録用に活用するとしよう。
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