5回目の緊急事態宣言が解除される直前、広島県の瀬戸内に面した街へ出張することになった。
今回は仕事を終えたら週末にキャンプをする予定なので荷物が大きい。
飛行機の手荷物預けは面倒だったので新幹線の最後列に陣取ることにした。
車内はコロナが収束したわけでもないのに席が埋まっており、中には昼間から缶ビールを開けている乗客もいた。
宣言解除間近ということもあり、一足先に日常に戻っているような感じだ。
福山で在来線に乗り換え、瀬戸内の穏やかな海を眺めながらのんびり移動。
人気のない駅前からこれまた人気のない繁華街を歩き、市内で一番古いという旅館に向かう。
コロナが蔓延しようがしまいが、最近の田舎街は過疎化が激しい。
どこへ行っても人のエネルギーが感じられない。
今後、ますます過疎化が進みゴーストタウンになるのだろうか。
久々の宿は部屋の四方が廊下に囲まれた鍵のない部屋。
The昭和!といった趣だ。
夕暮れ時、晩御飯を食べに辺りを散策することにした。
駅前にある今夏オープンしたばかりの真新しいホテルの客室から明かりが漏れている。
当初予約しようと思っていたホテルだが、何故か満室で部屋を取ることができなかった。
よっぽど人気の宿なのだろうか?
それにしては明かりの着いていない部屋も相当数あり、予約できそうな感じだったが、、、
宿に戻り主人と世間話ついでに駅前のホテルのことを尋ねると、
駅前のホテルはこの地域のコロナ感染者用の隔離ホテルになってるんですよ
とのことだった。
どうりでたくさん部屋が空いてそうなのに予約が取れなかったわけだ。
感染者は真新しい綺麗な部屋で療養し、出張者は廊下の軋んだ古い宿で仕事に勤しむ。
ちゃちゃっと仕事を済ませた週末は快晴。早朝に宿を発ち、電車とレンタカーでキャンプ場に向かう。
久々の友人とのキャンプは現地で合流することにしたのだが、当初の候補地は瀬戸内の島でビーチキャンプをする予定だった。
しかし、第一候補を含め近隣のキャンプ地は軒並み閉鎖か県外からの宿泊者はお断りとのことだ。
仕方なく前日まであれこれ候補地を探した結果、向かった先は緊急事態宣言の発令されていない岡山県。山間にある【チロリン村 キャンプグランド】
なんともメルヘンチックな名前でオッサン二人が泊まっていいのかと躊躇したが、このキャンプ場だけが県外からの受け入れもOKとのこと。
週末ということで家族連れで賑わうことが予想されるが、最悪、ゲリラキャンプも視野に入れていたので予約できただけでも良しとしよう。
神戸在住の友人Yとの中間地点なのでお互いのアクセスも楽だ。
昼前には現地に着いたが思った通り家族連れが多く、土曜日ということもあり既に受付には列ができていた。
予約したフリーサイトは早いもの勝ちなのでYの到着を待たずに列に並ぶ。
幸い、家族連れは区画エリアが目当てのようなので、フリーサイトには先客が殆どいなかった。
運よく入口からは見えない、一番奥のこじんまりとしたエリアを確保することができた。
設営前に一息着いていると、遅れてYもバイクで到着。
前回会ったのは晩秋の石槌山麓にある無料の野営場で、就寝中に登山靴を野生の狸に盗まれてしまい、翌日の石槌山登山を断念するという、思い出深いキャンプだった。
(Yはツーリングキャンパーなので登山はやらない)
それ以来、コロナ禍で登山もキャンプもしていなかったので、ほぼ一年ぶりの再会だ。
二人とも普段はソロキャンパーなのであっという間に設営を終え、巨大なテント設営に戸惑っているファミリーキャンパーを尻目にYは買い出しへ、自分は薪割りに勤しむ。
薪割にはビクトリノックスのフォールディングナイフを使っている。
パドニングをしているとロックが外れてしまったりもするが、一晩程度の薪の量ならなんとか事足りる。
連泊となるとめんどくさいかも。
フルタング、買っちゃおうかな~、、、
それにしても最近のキャンプブームは凄まじく、どこへ行ってもサーカス会場かと見紛うほどの巨大なテントが立ち並び、その周りは豪華な世帯道具類の見本市のようだ。
自然を楽しむというより買い物を楽しんでいるようだ。
メーカーはコロナ禍でもボロ儲けしていることだろう。
設営や火起こしに四苦八苦している他のキャンパー達を尻目にノンビリと珈琲を飲んでいると、Yが買い出しから戻ってきた。
Yはいつも調理を担当してくれる。
特別豪華な食材を使うわけでも、奇をてらった料理をつくるわけでもないのだが、身近で手に入る食材を利用して手間を掛けずに美味い男飯を振る舞ってくれるのだ。
ソロ登山やソロキャンの時はアルファ米と缶詰で済ますことが多いので、Yとのキャンプはいつもご馳走にありつける。
ありがたや~
のんびりと焚き火の番をしていると、薄闇が迫る頃にYが次々と料理を皿に盛ってくれる。
今回は予めリクエストしてあったトンテキ!
関東ではトンテキを出す店が少ないが、関西は独自の味付けで出してくれる店が多い。
Yのトンテキはニンニクの塊がゴロゴロと入ってスタミナ満点!
味のポイント、バターも保冷材に入れて持ってくるという気の使いよう!
ニンニクとバターがガッツリ効いてるのだから美味いに決まってる!!!
そんなにオッサン二人でスタミナつけてどうする?
お次は具沢山ホタテチャウダー
出てくる順番が逆なのでは?ということは突っ込まないでおいた。
アサリではなく、美味そうなホタテが売っていたらしい。
紐付きのホタテからいい出汁がたっぷりと出ていて、アサリより濃厚で激ウマ!
そのホタテチャウダーに最後はペンネを入れて晩御飯を締める。
Yとのキャンプ飯はいつも腹がはち切れる。朝と昼を抜いていて正解だった。
そんなYの料理に対して自分は珈琲を担当する。
珈琲だけはソロのときも妥協しない。
新鮮な豆から挽いて、淹れたてを味わう。
夜も更けて来ると焚き火の明かりだけが辺りを照らしている。
ここのファミキャン達は比較的マナーがいいようだ。
バカ騒ぎをすることもなく、それぞれの時間を静かに楽しんでいるようだ。
自分達も珈琲を飲みながら与太話で盛り上がっていた。
ここのキャンプ場もかなりの密ですけど、こうやってマスクもせず、向かい合わせに喋ってるとヤバいんですかね~
焚き火が真ん中にあると、たとえ飛沫が飛ぼうとも炎がウィルスを焼き尽くして上空に吹き飛ばしてくれるから問題無いんじゃね?
なるほど、焼肉屋さんでクラスター発生していないのも無煙ロースターのおかげなんですね
コロナ禍で人と会う時は焚き火か焼肉屋さんだな
なんの根拠もなかったが、Yは妙に納得していた。
そう言えば、あれほど叩かれていたパチンコ屋も未だにクラスターが発生していないよな
やっぱ換気が徹底しているからなのかな?
確かに!
それどころか関西ではパチ屋がワクチン接種会場になってて大好評ですよ!
パチ屋を散々叩いていた知事は詫び入れるべきですよ~
う~ん、、、そこまで素直になれたら将来はもっと大物になる予感だけど、
彼は意固地になってる感じだな。まだ若いからしょうがないか。
コロナが収束したらどういう総括をするのか、楽しみだな、、、
気がつくとサイトで焚き火の明かりが灯っているのは自分達だけになっていた。
翌朝、幼子のギャン泣きで目が覚めた。
それを合図にアチコチのテントでもギャン泣きの大合唱が始まる。
昨夜の静けさは一変し、一気に難民キャンプになってしまった。
誰もいない野営地では朝の静けさの中、野鳥の囀りで目を覚まし贅沢なひと時を堪能できるが、
それとは程遠い、ファミリーキャンプ場ならではの賑やかさだ。
目覚めの珈琲を手早く淹れる。
今回は二人なのでメッシュ五徳ではなくウッドストーブを使い多めの湯を素早く湯を沸かす。
辺りに珈琲の香りが漂う頃、Yがモソモソと起き出してきた。
朝食もYが作ってくれた。
今回は巷で流行りのホットサンド。Yも流行りを取り入れてるようだ。
自分で作る時はベーコンやチーズ、トマトなどと同じくらいに薄く焼いた卵を挟むが、Yは卵をだし巻き卵のように丸めトーストの上に乗せ、隙間に他の具材を押し込み、淵が閉まらないほどの豪快なホットサンドを作ってくれた。
関東と関西では作り方が違うのだろうか?
それともオリジナル?
ソロの時はシリアルと珈琲という素っ気ない朝食で済ますことが多いが、熱々を頬張れるのは幸せこの上ない。
ありがたや~
朝からガッツリと食い、動く気になれないなかで食後の珈琲をマッタリ飲んでいると、周りの家族連れ達が早々と撤収準備を始める。
初日は設営と食事の準備に終止し、翌日は早くからバタバタと後片付けに勤しむ。
チェックアウトがお昼までなんでゆっくりと過ごせばと思うのだが、なんとも忙しない光景だ。
ファミキャン達が巨大な所帯道具を車に積み込み終える頃、ようやく重い腰を上げる。
それでもあっという間に撤収が完了し、チェックアウトの手続きに並ぶこともなく、サクッとキャンプ場を後にすることができた。
身軽なソロキャンならではだ。
次回は浜辺で海キャンをやろうと約束し、Yはバイク、自分はレンタカーでそれぞれの帰路についた。
次のYとのキャンプではコロナ禍は収束しているだろうか、、、
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