ウサギの楽園で出張キャンプ -大久野島キャンプ場-

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 瀬戸内海に浮かぶ大久野島。近年はウサギの楽園として有名な島だ。周囲が4Kmほどの小さい島だが、野生化したウサギが島のあちこちにいて、訪れた人たちを癒やしてくれる。そんなウサギの楽園でキャンプをした記憶。

渡舟でウサギの楽園へ

 広島県の三原で仕事をこなし、数日間の休日後に広島市内で仕事をすることになったので、瀬戸内の海沿いを数日間キャンプで巡りながら市内へ行くことにした。

 初日は渡舟で15分ほどにある大久野島のキャンプ場へ行ってみた。

 三原から在来線で瀬戸内の美しい景色を眺めながら、30分ほどで忠海駅へ、そこから渡舟で湖のように穏やかな瀬戸内海を15分ほど進むとウサギの楽園へ到着する。舟はウサギ目当ての観光客で満杯で、乗り切れない人たちは次の便に回されていた。島の人気の高さが伺える。

  

 

 船着き場に着くと満杯の乗客は一斉に島のあちこちに散らばっていくが、その足元にはウサギ達が餌をもらおうと待ち構えている。

 島内にはホテルが一軒あるのみで民家などはない。そのホテルの敷地にキャンプ場が併設されている。因みに、ホテルには温泉大浴場もあり、キャンプ利用者でも入浴することができる。

 フロントで受付を済ますと、海に面した芝生のエリアに張ってくださいと説明されたが、この日は他の予約客はおらず貸し切りということだったので、好きなところに張ることができた。

 雨が降ってきそうな気配だったのでタープは傘モードで狭く張っていたが、瀬戸内海をのんびりと行き交う船を眺めていたら晴れてきたので、ワイドビューモードに貼り直すことにした。

 

 

 綺麗に整備された芝生の上でテントを設営していると、ウサギ達がどこからともなくピョンピョンとやってきて餌をねだってくる。ワンコではないので「マテ」と言ったところで聞きはしない。チャッチャと設営したあとはウサギ達と遊ぶことにした。

 ん~可愛すぎる~~~!

 野生のウサギだが、人間から餌をもらえることを学習したウサギ達は人間を怖がることなく、どこまでも愛らしく、図々しい(笑)。

 

 

 ホテルのフロントで購入したウサギの餌はあっという間に無くなり、時折、指を噛んで(けっこう痛い)、もっと寄越せとおねだりしてくるが、それすらも愛らしい。自分用に取っておいたナッツ類を差し出すと、それも一気に平らげてしまった。

 昼の間は観光客が所々で黄色い歓声を上げていたが、夕暮れ時になると日帰りの観光客は引き上げてしまうので、瀬戸内の静かなひと時をウサギたちと戯れながら過ごすことができる。

 

 

 ホテルの大浴場で汗を流しテントに戻ると、ウサギ達が道具類を物色中だった。

 そんなウサギ達に囲まれて夕食を摂り眠りにつくと、外ではウサギ達が運動会をしている。芝生の上をスタッ、スタッと走り回る足音が心地よい眠気を誘ってくれる。

 

 

 日の出とともに目覚め、穏やかな海を眺めながら珈琲タイム。

 早朝の心地よい潮風を受けながら島内を散策していると、遠くからウサギたちが朝ご飯をもらおうと走り寄ってくる。中には生まれて間もない子ウサギも混じっており、人間を怖がることなく側に近づいてくる姿を見ていると、この島のウサギたちが何世代にも渡ってとても大切に可愛がられているのがわかる。

 

 

 朝の散歩から戻ると、昨日からテント周りを走り回っていた好奇心旺盛なウサギがクッカー類に興味を示し、匂いをかぎ持ち去ろうといたずらしていた。

 

 

受難の記憶

 なんとも幸せ一杯なウサギ達のパラダイスだが、ほんの数十年前まで、ウサギ達の受難が刻まれた島だった。

 およそ80年前、昭和のはじめから第二次大戦の末期まで、日本軍が戦争で使う毒ガス兵器の工場があり、極秘の場所として地図から抹消されていた。その毒ガスを作るために多くのウサギ達が犠牲になっていたようだ。

 島内には【毒ガス資料館】があり、当時の資料などを見ることもできるが、毒ガス製造のために犠牲になったウサギ達がどれくらいの数になるのかはわからない。島にいるウサギ達がその末裔なのかも正確な資料はない。

 大久野島名物の【うさぎのはなくソフトクリーム】を頬張りながら眼の前でのんびりと寛いでいるウサギ達を眺めていると、改めて平和であることがいかにありがたいことかを実感した。

 ウサギ受難の島が今は楽園に変わり、ゆったりとした時間が流れる大久野島を後にし、次のキャンプ地へ向かうことにした。

 

 

受難、再び

 そんな穏やかな記憶に溢れたウサギの楽園に、再び災難が降り掛かった。

 昨年末から今年にかけて、島内のあちこちで瀕死のウサギや死骸が見つかった。その数およそ九十体、島内のウサギ達の2割にもなるという。島にウサギの天敵はいないので、犯人は人間ということになるのだが、当時のテントで遊んでいたウサギは災難から逃れることはできたのだろうか。

 たまたま犯行現場を目撃したご夫婦が犯人を取り押さえ、その場で現行犯逮捕された。その人物像はごく普通の二十代の会社員で、取り調べでは犯行動機や虐待の方法を悪びれる素振りもなく素直に語ったという。

 「虐待してみたかった」

 犯人の弁明だ。

 裁判では、残酷な方法で虐待されたウサギ達の無惨な姿が証拠として採用され、その時の犯人の心情などが語られたようだが、名のある企業の社員で、それなりに勉強も出来て成績も良かったのだろうが、心の成長は幼児で止まってしまったようだ。文字に記すことすらためらわれるような虐待内容と冷めきった心の在りように、もはや怒りを通り越して哀れに思えてならない。

 そして数日前、判決が言い渡された。

 【懲役1年、執行猶予3年】

 百匹近い命の代償にしては、余りにも軽すぎる判決だ。

 残念ながら、日本の法律では人間以外の動物はモノに該当するため、器物損壊と同レベルの動物愛護法を適用するのが限界ということらしい。

 犯人は反省の弁を述べているということだが、法律では心を正すことはできない。犯した行為の罪深さを犯人が本当に自覚し、反省する機会はやってくるのだろうか?

 思い返せば、30年ほど前は都内の地下鉄車内で毒ガスがまかれ、14人が亡くなり数千人もの人達が被害を被るという、世界史に残りそうな犯罪が発生した。その後遺症に苦しんでいる方々も未だに多くいると聞く。そんな狂気の犯行に及んだ首謀者や実行犯達も名だたる大学を出ている。なんのために時間とお金をかけて大学まで進学したのか、育てた親御さんの心中やいかに。

 近年、殺伐とした事件が毎日のように発生している。ストレスのはけ口として他者を傷つけたり、動物を虐待する事件が後を絶たない。社会全体に限りなくレッドに近いイエロー信号が灯っている。

 世の中全体が一度立ち止まって、人間は神ではないということを再認識しなければ、人類は絶滅危惧種の仲間入り間違いなしだ。

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