今年の夏は90連勤となったため、業務が落ち着いた頃合いを見計らい、ワンコを連れて温泉宿に出かけることにした。
入念な準備
ワンコと暮らし始めて一番大きな変化は、外出のハードルが格段に上がったことだ。それまでは、思いついたら直ちにノープランで旅行に出かけるくらいフットワークが軽かったが、今回は一ヶ月前くらいから準備をすることになった。
ここ数年、ワンコ連れでもOKの宿泊施設は増えてきているようだが、宿泊に際しては何かと制限を設けている宿が大半だ。部屋内はフリーだが館内はクレートに入れなければいけなかったり、レストランはワンコ同伴禁止だったり、、、
うちのワンコは繊細な面も持ち合わせているので、慣れない環境に置かれると体調を崩したりする場合がある。そうなると、せっかくの旅行もマイナス感情の記憶として残ることになり、次に繋がらない恐れもある。
そのため、今回の旅行の条件として、常にワンコと共に過ごせることを最優先した。
その条件を満たせる施設となると、コテージや貸別荘あたりが大半だ。敷地内の庭はドッグランとして利用できたりするが、食事は持ち込みだったり、お風呂がユニットだったりする。
できれば上げ膳据え膳で、ゆっくりと足を伸ばして温泉に浸かりたい。それ以外でも、いくつかの条件を設けてみた。
・温泉宿であること
やはり仕事疲れを取るのが一番の目的なので、大きな湯船でゆっくり疲れを癒やしたい。
・片道3時間程度
ワンコが初めて車に乗ったときは酔って吐いたりしていたが、その後は、1時間くらいなら車内でも問題なく過ごせるようになった。そのため、道中はこまめに休憩を取りながら行くこととし、最長3時間程度を上限とすればなんとかなるだろう。
・館内フリーであること
館内をうろつくときに、クレートなどに入れた状態ではワンコが疲れそうだ。リードを着ければOKなら良しとする。
・食事は一緒に食べられること
部屋食がベストだが、レストランなら他の飼い主やワンコと一緒に食べることで社会性の訓練にもなる。
上記の条件を満たす宿は意外に少なく、自宅から3時間圏内を探した結果、那須のリニューアルしたホテルが全ての条件を満たしてくれた。
今年の10月にリブランドオープンしたホテルで、館内はリードを付けていれば自由に歩き回れる。敷地内にドッグランがあり、屋内にも二箇所のドッグランが併設されているので雨が降っても運動ができそうだ。
食事は朝夕ともにワンコと一緒にレストランで食べれる。
温泉は那須なので間違いない。しかも、貸し切りでワンコと入浴できる家族風呂があるらしい。
これだけの条件が揃って、値段はリブランドオープン記念ということでビジネスホテル並み!初めてのワンコ旅として、これ以上好条件の宿はなかなかお目にかかれない。
旅の道中は誘惑がいっぱい
旅行当日の朝、普段なら五時起きで散歩に出かけるところ、この日は長旅に備えゆっくりと支度を行う。
ワンコのキャリーバッグを玄関に置き出かける準備をしていると、ワンコ自身も遠出することがわかっているようで、散歩に出たがる素振りは見せず大人しく待機している。
8時にレンタカーを取りに行き、後部座席に妻とワンコを載せ、いざ、出発!
まずは車を30分ほど走らせ大きな公園に立ち寄りトイレ休憩。都内もだいぶ紅葉が始まっている。落ち葉の上を歩くのは心地よいのか、盛んに動き回りながらトイレの場所を物色。



この公園はワンコもお気に入りの公園で、今日はここで遊ぶと思っていたのだろう。出すものを出した後に車に乗せようとすると拒否芝になり、もっとここで遊びたいアピールをしてくる。
そんなワンコをなだめすかし、後部座席に載せた後はバッグに入れず外を眺められるようにしてあげた。

その後は一般道をしばらく進み、浦和インターで東北道に入る。
初めての高速は外を流れる景色に夢中で、色々な車に抜かれたり抜き返したりする様を不思議そうに楽しんでいた。
今回のルートは中間地点にドッグラン併設のSAがあり、ちょうど1時間ほど過ぎたので休憩することにした。





施設は広々としており、ドッグラン以外の場所も芝生ゾーンがあったりして、人にもワンコにも優しいサービスエリアだった。
更に1時間ほど走らせ、西那須野ICで高速を降りた。チェックインにはまだ時間が早かったのでIC近くの牧場に立ち寄ることにした。
那須を旅行するのは10年振りくらいだろうか。当時の牧場の面影はなく、小ぎれいにリニューアルされていた。






ワンコにとっては初めて見る牛や馬、羊や山羊に大興奮のようで、いつまでも眺めていたりチョッカイ出してみたり、広い放牧場を走り回ったりと、すでにテンションMAX。


広い敷地内をワンコと動き回っていると腹の虫が騒ぎ出す。この施設はワンコ連れOKのレストランが併設されている。テラス席ならワンコといっしょに食事ができるようだ。
動き回っているときは感じなかったが、外のテーブルでランチを食べていると一気に体が冷えてくる。ワンコも寒いようで、体をブルブルと震わせている。

都内と比べ気温が数度低い那須の環境に体が慣れていないのだろう。体毛がまだ冬毛に変わっていない時期だったので、抱きかかえ、上着に包みながら早めにランチを済ませた。
別荘地に佇む静かなホテル
ランチを食べ終え牧場を後にする頃、チェックイン可能な時間になっていた。
那須岳へ向かう坂道をどんどん登り、一軒茶屋前の交差点から脇道にそれ、別荘や保養施設が点在する林道をくねくねと進むと今回のホテルが見えてきた。

玄関に入ると靴からスリッパに履き替える仕様となっており、ロッカー脇にワンコの足拭きタオルが常備されていた。ここで汚れを落としたら館内を自由に歩けるようだ。
館内スリッパに履き替えフロントに向かうと、フレンドリーなスタッフが出迎えてくれた。
建物は二階建てで全14室のこじんまりしたホテルだ。大型リゾートホテルだと、宿泊客や従業員とひっきりなしにすれ違ったりするので落ち着かなかったりするが、これくらいの規模だと初めてのワンコであっても静かに落ち着いて過ごせそうだ。




今回予約した部屋は八畳+縁側という作りで、部屋に入ると早速クン活モード。その間に珈琲を淹れ、ホット一息。
暫くの間、部屋のチェックを行っていたワンコだが、一通り満足すると外に出て探検したくなったようだ。扉の前で出たいアピールをしている。



外に連れ出すと、建物に沿って自然の地形を活かしたドッグランに向かい、そこかしこの匂いを嗅いでみたりホリホリしてみたり。落ち葉の中を歩き回るのが好きなワンコにとっては格好の遊び場となった。






ひとしきり遊んだ後は敷地外を探検したがっていたが、暗くなってきたので明日にしよう(熊怖いし)。
代わりに館内のドッグランへ行ってみることにした。館内の二階には程よい広さのドッグランが二箇所ある。壁で隔てられているので相性の悪いワンコでもバッティングしなくて済みそうだ。



食事は館内のレストランでいただくことになる。今まではホテル内で夕食を取ることはほとんど無く、近場のレストラン等で食べていた。
那須は美味い店がたくさんあるので、宿で食事を取らなくてもいいのだが、ランチタイムはワンコOKな店でもディナータイムになるとワンコ連れはNOという店がほとんどだ。
いくら留守番もキチンとこなせるとはいえ、初めてのお泊り旅行でワンコを部屋で待たせるのは忍びない。館内のレストランで食卓を囲めるのはとてもありがたい。
テーブルに案内してくれたスタッフはとてもフレンドリーで、ワンコもすぐに気に入ったようだ。初対面なのに唸ったりすることもなく、尻尾フリフリで喜びを表している。


ワンコ用の席も用意してくれたが、普段、椅子で食べてないので落ち着かないらしい。椅子から降ろしてあげると足元で大人しく周りの様子を伺っている。




どの料理もとても美味しく、ボリュームもちょうどよい加減で、本当にこの金額でいいんですか?というレベルだった。
一点だけ不満があるとすれば、ワンコ用のメニューは用意されていということだ。
以前はワンコ食も出していたそうだが、リブランドで再オープンするにあたって営業許可を再申請したところ、人間用とワンコ用の厨房を別々にしなければ営業許可が降りない時代になってしまったとのことだ。
世の中がどんどん世知辛く、融通の効かない時代になっていく。
食後は一休みしてから館内の温泉に行くことにしたが、ワンコを留守番させるのは気が引けたので交代で行くことにした。
この宿は貸し切り家族風呂もあり、ワンコ専用の湯船も用意されているようだ。せっかくなので是非利用してみたかったが、初めてのお泊り旅行で朝から走り回りお昼寝もしていない状況の中、これ以上新しい環境で慣れない負荷をかけるのもどうかと思ったので、貸切風呂は諦めることにした。
部屋の中では自分か妻のどちらかの姿が見えないとワンコは不安なようで、どちらかがお風呂で部屋を空けている間、扉の前でじっと帰りを待っていた。


普段はツンデレQueenだが、こういう場面では忠犬ハチ公になるようだ。
寝る時間になってもいつもと違う寝床にイマイチ落ち着かない様子だったので、家から持ってきたブランケットを敷いてあげると安心して寛げるようになった。

そんなワンコの姿を眺めていると、白濁硫黄泉の温泉効果もあり、いつの間にか眠りに落ちていた。
熊の気配に怯えながらの朝散歩
翌朝、窓の外はまだ薄暗かったがパッチリと目が覚めた!ものすごく深く寝ていたようで、気分爽快だ。
家ではワンコのペロ舐めで起こされるが、そのワンコはまだ熟睡している。初めての遠出で昼寝もせずに遊び回ったので疲れているのだろう。



静かに窓を開けると、ピリッとした冷気が温かい部屋にどっと流れ込んでくる。その気配でワンコと妻が目覚め楽しそうにじゃれ合っている。
陽が昇り、ワンコがストレッチを開始した頃合いを見計らい、外散歩に出てみることにした。一応、熊よけスプレーも持っていこう。

今年は過去最悪の熊被害が各地で巻き起こっている。那須エリアも例外ではなさそうで、熊出没マップを眺めてみると、宿からそう遠くない地点で親子の熊が目撃されている。
ただ、那須エリアの熊は人を襲うレベルには至ってないようで、昔ながらの臆病な熊のようだ。
いざとなったら、ワンコが追い払ってくれるだろう。むやみに不安がっていては何もできない。生まれつき楽天的な性格なのは相変わらずだ。



玄関で散歩帰りのワンコと挨拶。外へ出るとドッグランではなく敷地外へ進もうとするので、ここはワンコの気持ちを優先した。


木漏れ日が差し込む初冬の林道はとても静かで、ワンコと自分の落ち葉を踏み締める音しか聞こえない。
「Run!」
と掛け声をかけるとワンコは元気に走り出す。少し早めのジョギングモードで追いかけ、ワンコと林道RUNを楽しむ。
途中、坂道を登りきると中世の教会のような建物が現れた。どうやらイタ飯屋さんのようだ。



那須は人気の観光地なので、時代とともに色々な建物ができては消えていく。古い別荘は柴犬が似合いそうな趣だが、最近の建物は洋犬の方が馴染むデザインだ。

ひとしきりワンコとジョギングを楽しんだあとは朝ご飯。普段はこんなに食べないが、ほどよく汗をかいた体にはちょうどいい。
食後は館内のドッグランで暫く遊び、部屋に戻ったあとはコーヒーを飲みながら11時のチェックアウトまでマッタリと過ごす。


今回泊まったホテルは、大きすぎず小さすぎず、ワンコ用の設備も一通り完備されており、なによりスタッフ一同がワンコに対してとてもフレンドリーだった。慣れない環境の中、ワンコが滞在中に一度も唸ったり吠えたりすることもなく、とても寛いで過ごしていた。
豪華なホテルというわけではないが、初めてのワンコ旅の方にもオススメできる大満足の宿だった。


森の中のドッグランで大運動会
宿をチェックアウトした後は近隣施設に立ち寄りながら帰路に着いた。
那須はワンコ連れが楽しめる観光スポットがあちこちに点在しており、宿から10分ほど車を走らせると人気の牧場がある。



昨日訪れた牧場に比べ山の中腹に位置するので、緩やかな起伏の地形のあちこちに色々な動物がいる。
牧場を出る頃にはお昼時になっていた。人気のパン屋さんで焼きたてのパンを購入し、隣接する森の中で食べようと思っていたが、奥に進むと広いドッグランがあった。
普段のワンコはドッグランにはあまり興味を示さないが、今回は猛然と中に入ろうとする。自宅近くの環境とは違い、自然の中で野性味あふれる匂いに興味をそそられるのだろう。
入口のゲートで500円硬貨を投入し中に入ると、先客のワンコがいた。小型犬と大型犬で、飼い主共々おしゃれな装いをしている。別荘地の住人のようだ。
今回は珍しく、すぐにワンコ達と打ち解け、大興奮で敷地内を縦横無尽に走り回っている。

小型犬もはじめは一緒に遊んでいたが、二頭の走り回るスピードについていけないようで、立ち止まって二頭が走り回る様子を羨ましそうに観察していた。

そんな小型犬を脇目に、大型犬とうちのワンコが追いつ追われつの鬼ごっこを飽きること無く続けている。








大型犬のスタミナに負けること無く、いつまでも一緒に走り回るワンコの表情は今までで一番の笑顔が輝いている。旅に来てよかったな~と実感したひとときだった。
帰路は道の駅や往路で立ち寄ったSAなどで小休止したが、散々ドッグランで走り周り疲れているはずなのに、車から降りると楽しそうに歩き回っている。最後までスタミナお化け全開の豆柴だ。


日が暮れ、最後の小休止の後は車内で体を丸め、時折ガウガウとグズり始めてきた。さすがに疲れて眠くなってきたのだろう。
夜になり無事帰宅すると、直ちに水をたっぷり飲み、それまで食べなかったフードをガツガツと食べだした。ようやくいつもの寝床に帰れたことに安心したようだ。
その後はすぐに寝る体制に入り、布団を敷いてあげると途端に電池が切れた。まる2日間、ほぼ飲まず食わずの状態で遊び回り、大興奮の後に一気に疲れが襲ってきたのだろう。翌朝まで爆睡し、時折大きなイビキをかいていた。
初めてのワンコを連れた旅行は大成功に終わった。
繊細なワンコなので、旅に出る前は慣れない環境で無事に過ごせるか心配したが、幸いなことにホテルのスタッフが皆フレンドリーで、訪れた場所も自然に溢れ伸び伸びと過ごし、今までに見たことのないような笑顔を見せてくれたことで取り越し苦労に終わったようだ。
これからも、機会があればワンコと共に旅に出よう!


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